読んでたのしい、当たってうれしい。

ひとえきがたり

日暮里(にっぽり)駅(東京都、JR山手線ほか)

ようこそ にゃっぽり駅へ

日暮里(にっぽり)駅
北口の改札を出ると「にゃっぽり」がお出迎え。散歩に人気の谷中をはじめ駅周辺をガイドしてくれる
日暮里(にっぽり)駅 地図

 吾輩(わがはい)は、いちおう猫である。名前は「にゃっぽり」――。生まれたのは2011年6月のこと。駅周辺の観光情報をまとめた「おさんぽMAP」を駅員たちが作ったのがきっかけだった。近くの台東区谷中にネコが多いことから、若手の女性駅員がマップのワンポイントにネコのイラストを何げなくつけたという。

 イラストがかわいいと、マップは千部刷っても1カ月でなくなるほどの好評。そこでこのネコ、駅員の手作りポスターにも活躍の場を広げ、至福の表情で温泉につかったり、ケガをして包帯でぐるぐる巻きになったり……。

 「誰が描いたのかと問い合わせがくるようになりましたね」と副駅長の菊地昇さん(55)。インターネットでも話題になり、駅員たちの間で「名前はどうしようか」との声があがり始めたころ、作者が「にゃっぽり」とぽつり。昨年2月に作者は異動で駅を去ったが、「にゃっぽり」はすっかり駅の顔となった。

 フェイスブックに「にゃっぽり私設応援団」を設立したカメラマンのイシバシトシハルさん(41)は「作りこまれたゆるキャラが多い中、自分でも描けそうなところが純粋で温かい感じ」。

 昨年11月には、地元の少年野球団から応援用Tシャツに使いたいというラブコールも。駅側も快諾し、ユニホーム姿の「にゃっぽり」が誕生した。この春、駅を飛び出してグラウンドの野球少年たちにエールを送る。

 文 岩本恵美撮影 鈴木愛子

 

沿線ぶらり

 JR日暮里駅には、都区内の29駅34.5キロを一周する山手線をはじめ京浜東北線、常磐線のJR3線が乗り入れ、京成線と日暮里・舎人(とねり)ライナーにも乗り換えられる。

 駅北口コンコースの2カ所に隠れにゃっぽりが潜む。駅員のアイデアから生まれた。見つけるといいことがあるかも。

 都立舎人公園は日暮里・舎人ライナーの舎人公園駅からすぐ。緑と水に囲まれ、スポーツ施設やバーベキュー広場などがある。四季の花が楽しめ、レーガン元米大統領夫人から贈られた「レーガン桜」も名物。

 

 興味津々
てぬぐい にゃっぽり
 

 てぬぐい にゃっぽり(1050円)は駅構内にある濱文様(はまもんよう)エキュート日暮里店(TEL03・3805・4653)だけの限定商品。汽車に乗ったりカメラを提げて旅に出たりと「にゃっぽり」がいっぱい。昨年10月に販売を開始。ハンカチサイズ(525円)もある。

(2014年2月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

ひとえきがたりの新着記事

新着コラム

  • 美博ノート 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 建モノがたり 本館古勢起屋 (山形県尾花沢市) 川の両岸にレトロな旅館が立ち並ぶ。そんな銀山温泉のイメージを体現する築110年の「本館古勢起屋」は、老朽化などのため約20年ほぼ放置されていた。

  • 私のイチオシコレクション カメイ美術館 当館は仙台市に本社をおく商社カメイの第3代社長を務めた亀井文蔵(1924~2011)が半世紀以上かけて収集したチョウをコレクションの柱の一つとし、約4千種、1万4千匹の標本を展示しています。

  • ななふく浪曲旅日記 浪曲は治療、なら、浪曲師はお医者さん? 朝日新聞のWEBRONZA論座で「ななふく浪曲旅日記」として、連載をさせていただいておりました。浪曲のお仕事でさまざまなところへ旅をする中で感じたことを綴っておりましたのを、装い改めて、こちらで再連載することになりました。どうぞよろしくお願いいたします。