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2010.3.9(火)更新  橋に願いを/鍛冶橋


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鍛冶橋(岐阜県)

往来の名物、熱々の中華そば

鍛冶橋

雪が降りしきる鍛冶橋。川沿いには宮川朝市の露店が並ぶ
坂口順治さんと川原節男さん
坂口順治さん(右)と川原節男さん。まさごそばの前で
 屋台ののれんが開くと、雪の中に白い湯気がばーっと広がる。かつおだしの利いた中華そばの香りが漂う。

 戦後間もない岐阜県高山市。ここで生まれ育った川原節男さん(81)にとっての、冬の夜の印象深い情景だ。「席に座れないと、鍛冶橋(かじばし)の欄干まで丼を持って行ってすすっている人たちもいました」

◇        ◇

 宮川にかかるいくつもの橋の中で、鍛冶橋は市のほぼ中心部に位置する。「宮川朝市」の起点で、伝統的な建造物が立ち並ぶ「三町」も近いことから、日中は観光客の往来も多い。

 橋の欄干の中央部で向かい合うのは、出雲神話に由来する「手長」と「足長」の一対の像だ。高山祭の山車に飾り付けられる彫刻を模して、1983年の改修時に据えられた。異様に長い手足と奇怪な表情に魅せられてか、観光客が立ち止まって記念写真に収まっていく。

◇        ◇

 同市有楽町の中華そば店「まさごそば」は、38年に先代の故・坂口時宗さんが、屋台を引いて鍛冶橋周辺を流したのが始まりだ。かつおだしとしょうゆだれを合わせた独自のスープを作り上げると、寒さの厳しい高山で評判を呼んだ。

 戦後は、橋の西詰に屋台を据えた。昼は料亭で働き、夜は午前2時まで屋台に立った。雨が降っても大雪でも、休まなかった。「みんなが待っとってくれるから、って言ってなあ」と屋台を手伝っていた坂口順治さん(66)。順治さんは時宗さんの娘婿で、まさごそばの2代目店主だ。橋周辺は、映画やパチンコ帰りの人々で夜遅くまでにぎわったという。

 350メートル上流には、朱塗りの中橋が優雅な姿を水面に映す。高山祭の山車が通るときのあでやかな風景でも有名だ。

 鍛冶橋は、見栄えではかなわない。でも時宗さんがたもとで守り続けた味は、市内のあちこちで「高山ラーメン」として受け継がれ、橋とともに人々に愛され続けている。

文 杉田裕実
撮影 垣内博


■高山ラーメン
 「桔梗(ききょう)屋」店主の塩屋稔さん(67)によると「かつおだしとしょうゆだれを一緒に煮込むことにより出る独特のコク」が特徴。具は煮豚、飛騨ネギ、メンマが基本だ。主な店は次のとおり。【まさごそば】高山市有楽町31の3(TEL0577・32・2327)【桔梗屋】同市本町3の58(TEL32・2130)【鍛治橋】本町3の62(TEL32・0473)。

■春の高山祭
 4月14日(水)と15日(木)、午前9時半〜午後9時ごろ(15日は4時ごろまで)。日枝神社の例祭で、日本三大美祭の一つ。国の重要有形民俗文化財に指定される12台の屋台と巧みな「からくり奉納」が見どころ。問い合わせは市観光課(0577・32・3333)。

■宮川朝市
 午前6時〜正午。鍛冶橋から弥生橋にかけての川沿いに食品や民芸品など生産者直販の露店が並ぶ。4月以降は新鮮な農作物も。問い合わせは朝市協同組合(0577・62・8558)。


 【メモ】
鍛冶橋は幅11メートル・長さ33.15メートルのT桁橋。1680年代に、近隣商人の盗まれた金で木造橋が架けられたと伝わる。周辺に鍛冶屋が多かったことから命名されたという。1911年に改修され、34年にコンクリートの永久橋に架け替えられた。

地図

(2010年3月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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