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2008.1.17(木)更新  ラジカル鈴木のこの2人が最高!!
ラジカル鈴木のこの2人が最高!!
第8回 「ラスト、コーション」
トニ−・レオン & タン・ウェイ
ラスト、コーション
■「最後」ではなく「色情」と「いましめ」

 2008年も宜しくお願いいたします! 皆さんにとって良い年になることを願っております。さて今年の第一弾ですが、イキナリまたしても、ベストと呼ぶには皮肉過ぎるカップルを選んぢゃったかも!? 敵同士、日本軍占領下の上海を舞台に、軍の特務機関の高官と中国国民党の女学生スパイとの禁断の逢瀬。相手を破滅させるための、殺るか殺られるかの駆け引き、・・・これもひとつの男と女の出会い。極限状態だからこそ、そこに一筋の光のような、カリソメの真実がチラリとある。そして肉体は決してウソをつかない(つけない)。男女の仲はキレイごとだけではない、たとえどんなに完璧なカップルだとしても、表もあれば裏もあり、逆に最悪最低のカップルにも愛はちゃんとあったり(そのほうがお話としては面白い)。そういう意味では、現代から見てもそんなに非現実ではないような気がしますね。男と女はいつの世もせめぎ合いと駆け引きをしてますからね。そして人間は、憎しみが愛に変わったり、苦痛が快感に変わったり、移ろい易くて不思議なモンだなあ〜、としみじみ。

 タイトルは(ラストコーション)ではなく、ラスト(Lust 色情)、とコーション(Caution 戒・いましめ)、相反する二つの英単語。まさにこれがテーマ。昨年のベネチアで金獅子賞を受賞した、世界が注目する超話題の米資本の中国映画です。

 冷酷沈着で人を疑うことしか出来ない、機密機関のトップ、イーに扮するのは、アジアを代表する大スターのトニ−・レオン。相手は、その若い肢体を張って活動する女スパイ、ワン・チアチーに扮する、オーディションで1万人の候補の中から大抜擢された、タン・ウェイ。

■アカデミー監督賞後のアン・リー話題作

 監督は「ブロークバック・マウンテン」(2005)で第78回アカデミー賞監督賞や第62回ベネチア映画祭作品賞を取り話題をさらった、台湾人でアメリカで活躍するアン・リー。レベルの高いアジア映画を、世界の表舞台に乗っける重要な役割を担っている一人です。というか、彼にはもう国境などはボーダレスですね。コメディやアクション巨編や、様々な作品を手がけていますが、どんなタイプの映画を作っても上手い。中国の巨匠チャン・イーモウしかり、役者のトニ−・レオンしかり、韓国、台湾の映画人も含めて、アジアの映画人は、何でも意欲的にこなす器用さとどん欲さがありますね。日本人にはソレが足りないような気がします。

 アン・リーはいくつかの得意分野を持っていますが、スー・チーやチャン・ツィイーなど、女優を開花させるのには定評があります。時の人となった今、世界に華々しく放ったのは洗練されたアジアン・ビューティーではなく、昔ながらの大陸的な、生命力に溢れた顔、素朴でトラディショナルな雰囲気の、このタン・ウェイだったというのが実に興味深いですね。古風な女性のほうが好きだ、という本人の弁の通りに。

■極限のラブシーンが「生きがい」

 また監督は禁断の愛を描かせたら最高に上手い! 極限状態でのラブシーンを演出するのが生き甲斐だと語っているくらで、その彼が撮った今までで一番刺激的なのがコレぢゃあなかろうか!! ネタバレの恐れがあるのであんまり詳しくは書けませんが、とにかくHシーンは凄まじいのひとことに尽きます、まるで格闘技!?! トニ−(イー)も正妻にはこんなプレーはできまへんなあ〜!! 総てをさらけ出すことが、本当に愛し合うことなのでしょうか? 理解する第一歩ではあるでしょう・・・ましてや、これは中国映画、中国でこれまで描けなかった表現の限界に挑戦しているのです!!

 この連載でアン・リーの前作「ブロークン〜」を選んだらもっと皮肉だった? だってこっちは男同士ですからね!! しかし監督が描きたかったのは純粋な愛、そして彼らもカップルには間違いはない。そこを世間でもちゃんと評価したワケで。現代はそういう時代なんですね。で、ホモセクシャルの次のモチーフはサディズム? アン・リーはとうとうSMにいったかあ〜??と。ま、冗談ではなくて、それも人間が持っている本質のひとつだし、彼はそれを探究しているのですから。禁じられ、抑圧されたワケありのラブシーンだからこそ興奮します(笑)。作品全体のトーンもどこかSMっぽい感じがします。前半、タン・ウェイが作戦のために処女を捨てたのに、それが無駄になっちゃったりとか、痛々しいエピーソードが続き・・・でも、彼女はその生き方がまんざらでもなさそうな?

■動くとすごいぞトニー・レオン

 トニ−・レオンって、細くてあんまり背も高くなくて、ヤサ男ですよね。頭が大きい。ひと昔前の日本の銀幕のスタ−のような・・・目鼻立ちがハッキリとして、実に映画的な役者です。アート系からアクション、コメディまで演技の幅はむっちゃ広くて、巧みです。この一見頼り無げな男が、実は動いたら凄い! 激しくキビキビとスピーディー! また脱いでも凄い!! ファンの貴方はよ〜くご存じでしょうけど、数々の露出度の高いラブシーンを演じてきましたからねえ・・・でも今作は極め付け!!

 1962年香港生まれ。「恋する惑星」(1994)「2646」(2004)他で香港電影金像奨・主演賞を5度、助演賞1度、「花様年華」(2000)でカンヌの主演男優賞。プライベートでは、香港の人気女優カリーナ・ラウとの長年の交際が有名で、ひと昔前までは、(お騒がせバカップル)的に報道されることが多かったみたい。一緒に東京ディズニーランドに来たり。トニ−の両親が幼い時に離婚しているのが関係あるかどうかはわかりませんが、結婚という制度に反発があるのか、二人は籍は入れてないんですな。

 主演の二人以外に、タン・ウェイ(チアチー)のことをずっと思い続けている中国国民党の同志クァン・ユイミンに、アジアで歌手としてスーパー・スターのワン・リーホンが映画本格出演。太いまゆげに大きな瞳の奥に炎をたぎらせた、ひと昔前の日本のスポコンマンガのキャラクターみたいな一直線な役で、いい味を出してます。この3人、チアチーを巡って三角関係。お国の為とは言え、ずっと思いを寄せているチアチーの身体を夜な夜な敵のイーが犯し汚していることを想像すると、タマラなく悔しく狂いそうなクァン・・・チアチーも彼にはずっと思いを寄せていたのに。嗚呼、運命の皮肉。

 チャイナドレスに着飾った有閑マダムたちが世間話をしながら麻雀卓を囲む場面が沢山出てきますが、マージャンはまさに駆け引きの象徴、他愛もない世間話をしながらも、心の中では熾烈な戦いが繰り広げられる。そのさまが何故か妙に官能的。全編に流れる緊張と官能・・・やはりアン・リーの演出は圧倒的に上手い。ほとんどのシーンでニコリともせず眉間にシワを寄せてしかめっ面をしているトニ−・レオンからは孤独な哀愁が出まくり、そして大形新人タン・ウェイはいたいけで哀れでセクシーで、今後どれだけ洗練されていくのか大いに楽しみでもあります。見ごたえのある大作です。次回もご期待を!

ラジカル鈴木
 フリーのイラストレーターとして20年以上のキャリアを持ち、現在ではイラストのみならず、雑誌や新聞で映画レビューや旅行ルポ、ダイエット記などを執筆しており文筆家としても活躍している。

 ニューヨーク・アート・ディレクターズ・クラブ賞銅賞受賞(米国)、ユネスコ国際ポスター展入選(仏蘭西国)をはじめ、国内外の賞を数多く受賞している。2006年には文化庁メディア芸術祭10周年企画「日本のメディア芸術100選」のアート部門に1999年の「大顔展」の宣伝ビジュアル作品が選出された。

 公式サイト http://www.big.or.jp/~radical/
 
(すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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