どら焼き、といえば、お寺の銅鑼の形に似ているからそう名付けられたというのが定説。だが、京都・東寺近くに店を構える老舗「笹屋伊織」のどら焼は(一棹1365円)、それとは似ても似つかぬもの。熱した銅鑼の上で焼いた皮に棒状にしたこしあんを載せ、くるくると巻いて作ったからどら焼、なのだという。姿形はまるで日本版ロールケーキだ。
店長の小笠原夏美さんは「江戸末期、五代目当主が東寺のお坊さんに副食となる菓子を作ってほしいと頼まれ、お寺でもお作りできるようにと考えたものなんです」。
皿や手を汚さずに食べられるようにとの配慮から、竹の皮でくるんであり、皮を巻いたまま切って供す。竹の香りがかすかに移った生地には水あめやはちみつが使われているので、しっとり、もちもち。その分、中のこしあんの甘さは控えめだ。バターや生クリームを使わないシンプルな和菓子ながら、一切れでもかなりの満足感がある。当時のお坊さんたちにはぜいたく品だっただろうな、などと想像をめぐらせながらいただくのも楽しい。
この珍しいどら焼は当時のお坊さんたちだけでなく、町の人々の評判にもなったが簡単には作れないので、東寺ゆかりの弘法大師(空海)の月命日の21日に立つ弘法市に限定で売ることにしたという。現在は毎月20、21、22日の3日間販売しているが、いまも変わらぬ製法で味を守り続けている。