もう何年も前の11月、夜も更けて静かな神楽坂通りを歩いていた私は、何十メートルもの行列に遭遇しました。
「こんな夜中にいったい何ごと?」
行列の先はワインの品ぞろえに定評のあるスーパーKIMURAYA。その日はボージョレ・ヌーヴォーの解禁日、11月の第3木曜日を迎える前夜だったというわけ。誰よりも早くこのワインを楽しもうと、大勢の人が夜中のスーパーに集まっていたのです。
パリでも解禁日から2週間くらいはお祭り騒ぎ。あちこちのカフェで「ボージョレ・ヌーヴォー到着!」のポスターが張られ、樽(たる)からワインを注いで楽しみます。誰とでも親しく乾杯を交わす和気あいあいとした雰囲気が、このお酒のいいところです。
日本での人気は格別で、フランスから輸出されるうち、約半分はなんと日本向けなのです。
こんなにも日本で愛される理由の一つは、世界一早く飲めるから! 51年に仏政府が定めた解禁日制度により、先進国の中では、どこよりも早く味わえます。また、旬を大切にする日本人にとって、季節ものの新酒は価値が高いと思えるのでしょう。
特別な醸造法で早飲みができ、バナナやイチゴの香りやフルーティーな味が楽しめるガメイ種(ボージョレに使うブドウの品種)は、山梨などの日本のワインに似ているんだそう。
ボージョレワインの普及に貢献した人に授与される「ボージョレワイン騎士号」に、今年はワインを題材にしたマンガ『神の雫(しずく)』の原作者、亜樹直さんが選ばれています。
さて、今日はまさに解禁日。今年の味はどうですか?