百万都市・江戸は、言葉も習慣も異なる人々が全国から集まった異文化のるつぼでした。当然おこるあつれきやトラブルを未然に防ぎ、人々が安心して楽しく暮らせるように、江戸町方のリーダーたちは様々な手立てを工夫しました。
その一つが「江戸しぐさ」です。目つきや表情、話し方や身のこなしによって、思い(心)を表現する方法です。
代表的なしぐさとして挙げられる「肩引き」とは、人込み、狭い道で人とすれ違うとき、お互いに肩を後ろへ引くこと。ぶつからないように、相手の行く手を遮らないように、互いの胸と胸をあわせて体を斜めにした格好ですれ違います。「傘かしげ」は、雨の日のしぐさ。傘を人のいない方へ傾けてすれ違えば、滴で相手をぬらさずにすみます。
これらは「お初しぐさ」「稚児しぐさ」と言われ、子どものうちに習得するものでした。
「江戸しぐさ」は、一言で言えば江戸の感性(センス)なのだそうです。この感性・知恵を語り継いできたのが、「江戸の良さを見なおす会」の故・芝三光先生です。私が、芝先生から伺ったお話を最初の本にまとめさせて頂いてから14年になりますが、世の中はますます物騒で、社会の不安も高まっています。
すぐにできて、見ている方も気持ちよい小さな良いこと、「江戸しぐさ」。現代でも、グローバルスタンダード(世界標準)として立派に通じると思いませんか?