「江戸しぐさ」は言葉づかいをとても大切にしました。もともと商人のしぐさですから、どんな身分のお客様にも失礼でない、そして耳に快い言葉でなければなりませんでした。
ものの言い方というと、尊敬語、謙譲語など難しい話になりがちですが、「江戸しぐさ」の敬語は、相手を立て、自分はへりくだる謙虚な言葉なのです。
人の感情を逆なでするようなとげとげした言い方、チクリチクリとした嫌みや、あてこすりのたぐいの「刺し言葉」は、水かけ言葉ともいい、そのような心ない言葉からいじめやいくさが起きると禁物でした。
人さまから何か意見を言われたときは、まず最後まで静かに聞くのが礼儀です。他人の発言を、途中で遮ったり妨害したりするのはもってのほか。意見を求められたらはっきり自分の考えを述べればいいのですが、「そういうお考えもあると思いますが」と一言添えて前者を立てる思いやりがあってもいいと思います。「でも」「だって」「しかし」「そうは言っても」などの「戸締め言葉」も、口ぐせにしないように気をつけたいものです。
また、自分は何も実行していないのに、文句、いわばマイナス情報ばかり並べて、まわりの意欲をそぐような人がいます。「だめでもともと」が江戸っ子たちの、ものごとを「陽」にとらえるプラス精神でした。分かっていても、わざわざ他人の揚げ足を取るようなことは言いませんでしたし、そのような人は「野暮(やぼ)」とされました。