「うたかたの恋」というはかない恋をうたったロマンチックな映画がありましたが、うたかたとは泡沫と書きます。水の「あわ」という意味です。泡沫(ほうまつ)候補なんて失礼な言い方もあるぐらい。そういうと急につまらない、心もとない、頼りない気分になってしまいます。
話しかけても生返事で落ち着かない人のしぐさを「うたかたしぐさ」といいます。こんな人は江戸では信用ができないとされ、おつき合いにも注意しました。
対照的に、たたくとすぐ美しい音が出る太鼓や鐘のように、間髪を入れず反応を示す、江戸っ子の生き生きした対応を表す言葉だといわれているのが、「打てば響く」という表現です。
「呼ばれたら『はい』と元気に返事をしましょう」。小学校1年生になったとき真っ先に教えられましたね。素直に従っていくうちに、素早い反応は生きていくうえで大事なこと、気持ち良いことだと実感するようになります。
「打てば響く」ような素早い反応が「くせ」になると、相手が言いたいこと、考えていることに、だんだん想像力が働いてきます。一目も二目も先が読め、相手のことを思いやれるようになって、「指図されなきゃ動かないのはかっぺいだ」と江戸っ子が自負したような生き方が生まれるのではないでしょうか。ここでのかっぺいとは田舎っぺいではありません。井の中の蛙(かわず)という意味で、「井蛙(せいあ)っぺい」とも言いました。