マリオン・コムロゴ
2006.6.7(水)更新  江戸しぐさ

江戸しぐさ バックナンバーへ   コラムのトップページへ  

画像

譲り譲られる気配りを

 私たちは、生活の中で様々な障害や軋轢(あつれき)にぶつかります。外出して不愉快な目にあうと、一日中気持ち良くありません。

 電車の昇降口で、大きなかばんを肩に携帯電話をいじり、イヤホンで音楽を聴き、一歩も動かない人をよく見かけます。周囲のことは眼中になく、乗り降りする人の障害物になっているのです。これは江戸で嫌われた「仁王立ちしぐさ」。そのような態度を見ると、心がささくれだってしまいます。

 優先席でなくとも、お年寄りや、体の不自由な人が前にいらしたらさっと席を譲る、たまにそんな若い人を見ると「かっこいい」と思います。願わくは、譲られた方は素直にその好意を受けて欲しいのです。せっかく勇を鼓してどうぞと譲った小学生に、「次、降りるから」とにべもなく断らないでください。「ありがとう」と言って座り、降りるときにもまた「ありがとう」と言えばいいじゃありませんか。あのはずかしさと失望の入り交じった少年の複雑な表情が忘れられません。

 また時々、横一列になっておしゃべりをしながら歩く女子学生を見ますが、これは天下の公道を占拠してしまう「通せんぼしぐさ」。ずいぶん前に銀座で、和服のすてきな老婦人が歩道の端を滑るように歩いて来られ、その身のこなしに思わず見とれてしまいました。なんと皇后美智子さまの故母上だったのです。つつましく気品あるしぐさを見習いたいものと、そのお姿が脳裏に焼き付いています。

(江戸しぐさ語りべの会・主宰)

題字・イラスト 伊藤美樹

越川 禮子

(2006年6月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

asahi-mullion.comトップページへ
サイトマップ | 会社案内 | 朝日マリオン・コムとは | 姉妹メディア | 会員規約 | 個人情報・著作権
asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2006 Asahi Mullion 21. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.