私たちは、生活の中で様々な障害や軋轢(あつれき)にぶつかります。外出して不愉快な目にあうと、一日中気持ち良くありません。
電車の昇降口で、大きなかばんを肩に携帯電話をいじり、イヤホンで音楽を聴き、一歩も動かない人をよく見かけます。周囲のことは眼中になく、乗り降りする人の障害物になっているのです。これは江戸で嫌われた「仁王立ちしぐさ」。そのような態度を見ると、心がささくれだってしまいます。
優先席でなくとも、お年寄りや、体の不自由な人が前にいらしたらさっと席を譲る、たまにそんな若い人を見ると「かっこいい」と思います。願わくは、譲られた方は素直にその好意を受けて欲しいのです。せっかく勇を鼓してどうぞと譲った小学生に、「次、降りるから」とにべもなく断らないでください。「ありがとう」と言って座り、降りるときにもまた「ありがとう」と言えばいいじゃありませんか。あのはずかしさと失望の入り交じった少年の複雑な表情が忘れられません。
また時々、横一列になっておしゃべりをしながら歩く女子学生を見ますが、これは天下の公道を占拠してしまう「通せんぼしぐさ」。ずいぶん前に銀座で、和服のすてきな老婦人が歩道の端を滑るように歩いて来られ、その身のこなしに思わず見とれてしまいました。なんと皇后美智子さまの故母上だったのです。つつましく気品あるしぐさを見習いたいものと、そのお姿が脳裏に焼き付いています。