マリオン・コムロゴ
2006.6.21(水)更新  江戸しぐさ

江戸しぐさ バックナンバーへ   コラムのトップページへ  

画像

陽にとらえて人生楽しく

 そもそも誰かとウマが合わないとか、物事が思ったとおりに運ばない、ということはよくあります。でもとにかく、江戸っ子は陽気で明るく楽観的でした。人の短所は十分知ったうえで、良い面だけを強調しました。初対面の人にも十年の知己のような人なつこい表情で接し、決して身構えません。そのほうが人生は楽しいと判断していたのでしょう。たとえ失敗しても「だめでもともと」とすぐ立ち直る潔さとめげない精神ももっていました。たとえば、「千円しかない」とがっかりするより「千円もある!」と考え、物事を「陽にとらえる」のが江戸っ子の生き方だったのです。

 陰気な目つきは「陰り目」と言って嫌われました。商人が暗い目をしていたら買う気がなえてしまいます。同じ品物なら、愛想よく客さばきが上手な売り手から買いたいのが人情です。

 良い店とは、言葉を交わさなくても、こちらの気持ちをくみ取ってくれるような、すっと入ってすっと出られる店なのだとか。売り手も買い手もお互いに、店でのやりとり自体を楽しみました。

 江戸商人は、やる気、根気はもちろんですが、呑気(のんき)なところもあったようです。腹が立つことがあっても、冷静になるまで待って争いを避けました。明日になればどうでもいいことに思えるかも知れない、あってもなくてもいい存在という意味で、このしぐさを「夜明けの行灯(あんどん)」と言いました。衝動をコントロールする知恵ですね。

(江戸しぐさ語りべの会・主宰)

題字・イラスト 伊藤美樹

越川 禮子

(2006年6月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

asahi-mullion.comトップページへ
サイトマップ | 会社案内 | 朝日マリオン・コムとは | 姉妹メディア | 会員規約 | 個人情報・著作権
asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2006 Asahi Mullion 21. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.