今も昔も、場所や時をわきまえることは大切です。人前で服装をととのえる行為は「じだらくしぐさ」といわれ、たいへん失礼なことでした。じだらくは「自堕落」と書き、生き方のだらしない様子をいいます。
袴(はかま)を直すときは人目に触れないようにびょうぶの陰でしました。今でいえばズボンのベルトを緩めたり、ストッキングを直したりといったことはトイレで行いたいものです。電車の中で、化粧をしたり、いい大人がおにぎりを食べたり、ビジネスマンが携帯電話で大声で話したりするのを見かけますが、こんなことは序の口。ついこの間は若い女性が、カップに入ったおでんのこんにゃくを、並んで座っていたボーイフレンドに食べさせていたのです。それだけでなく、止まった駅のプラットホームに空のカップを大急ぎで置いて座席に戻ったのには仰天しました。車内は現代の世相そのものかもしれません。
昭和の初めごろまでは、料理屋で相客がたばこを吸わないときや、学校の職員室で教師がたばこを吸っていて生徒が入って来たとき、また列車の座席でたばこを吸っていた紳士も子連れの客が同席すれば、すぐ火を消したそうです。これらすべて無粋に注意される前に、自発的に行う約束事でした。
このごろは、たばこの弊害に対する意識も高まり、真冬でもベランダで吸わなければならないパパはちょっと可哀想な気がしますが、家族の健康には代えられません。