このごろ人は雄弁になりました。グループインタビューをしても、司会者は発言者が独走しないようにするのが大変なようです。話したがる人は多いのですが、人の話に耳を傾ける聞き役は少ないように思います。
江戸商人は、相手はどんな人なのか、何を望んでいるのかを真剣に聞き、察しようとしました。「聞き上手」とは、話す人の目を見て身を乗り出し、ひたすら聞くしぐさの人。話す人への敬意やエールが感じられ、話し手も熱が入ります。さらに、ほほ笑んだりうなずいたりして共感を示すしぐさや相づちは、聞き手の優しい人柄を感じさせますね。
反対に、私語はもとより、よそ見をしたり無表情だったりすると、相手の話す意欲をなえさせるし、何より失礼です。
だいぶ昔になりますが、あるサロンで元首相の故・福田赳夫氏がスピーチをなさったことがありました。私ともう1人の女性が両脇の席に座り、「SPが2人ついていますので」と冗談に申し上げたら、「本物?」と聞かれたので、思わず噴き出してしまいました。質問や感想を述べに次々と立つ人をじっと見詰め、軽くうなずかれながら丁寧に耳を傾けられ、歯切れよくお答えになっていました。
それから間もなくお亡くなりになったのですが、さしあげたバラの花束を高く掲げながら、拍手の中、「さよなら」とお帰りになったダンディーな元首相は、まさにトップの品格とユーモアのある「聞き上手」でした。