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2006.9.27(水)更新  江戸しぐさ

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心込めた「目つき」に納得

 江戸は「生き馬の目を抜く」と言われるくらい、競争が激しい町でした。

 商人は、お客と互角であるという誇りを持ちながら、お客との出会いは「一期一会」と真剣に接し、また、十両の客より百文の客を大切に扱うよう心掛けました。

 「いくつもの店の中から当店を選んでくださったのは有り難い(なかなかない)こと」と、その思いを言葉だけでなく、目つきにも込めました。ほほえみを含んだ「おあいそ目つき」で客を迎えたのです。身のこなしにも、いそいそとしたうれしさがにじみ出たことでしょう。

 目当ての商品がなかったとき、「おあいにくさま」という事務的な切り口だけでは客はがっかりしてしまいます。「せっかくいらしてくださいましたのにあいすみません、すぐに取り寄せます」などの言葉とともに、すまなそうに目を伏せ、まばたきをして申し訳なさを表現しました。これを「おあいにく目つき」といいました。あたたかいそのしぐさに納得した客は、素直にあきらめ、「また来よう」と思うわけです。

 このごろのお店では、そうしたやりとりが少なくなってしまいました。昔かたぎの魚屋さんが言っていました。「このお魚はどうして食べるのが一番おいしいの? なんて聞くお客がいなくなっちゃった。どんなふうにして食べてんのかねえ」。そしてある日、量販店進出のあおりを受けたその店は、閉店に追い込まれてしまったのです。

(江戸しぐさ語りべの会・主宰)

題字・イラスト 伊藤美樹

越川 禮子

(2006年9月20日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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