IQ(知能指数)よりEQ(心の知能指数)の時代だと言われて久しくなります。EQとは自分の感情を把握する能力、他人の気持ちを理解する能力の指標で、人間関係を築くための力を表すものとも言えます。
「EQ−−こころの知能指数」の著者、ダニエル・ゴールマンによると、EQは、共感力、自己認識力、粘り強さ、楽観性、熱意、衝動のコントロール力といった要素からなるそうです。私はこの本を読んだとき、古風な表現ですが「はた」とひざを打ったのです。これらが全部「江戸しぐさ」の要素でもあるからです。
「江戸しぐさ」は江戸町方のリーダーたちの感性で、他の地域や他人との付き合いを特に大事にします。いわば人とのお付き合いの仕方を教える考え方なのです。
その基本が「お心肥(しんこやし)」です。おいしいものを食べて体を肥やすばかりでなく、心を豊かにするということです。立派な商人になるには、知識や技術を身につけ、さらに人の間で切磋琢磨(せっさたくま)して人格の向上をはからなければなりません。その究極は人を育てることに尽きるといわれました。
「心を肥やす」には、温故知新を旨として、江戸しぐさのルーツになる陽明学などの古典に接するのもいいのではないでしょうか。自分を高めれば次第に洞察力がつきます。そして、子どもや後輩を見守り温かく指導できるようになることが、お心肥の理想です。