「江戸しぐさは相づちしぐさ」とも言われます。相づちの巧みさは、商人の素養として欠かせないものでした。売り手と買い手の打てば響くようなやりとりは、はたで見ていても気持ち良いものです。自動販売機には、このようなやりとりの快感はありません。
このごろ、謙譲語や尊敬語がうまく使えないと悩んでいる人が多いようですが、普段の言葉遣いでも、緊張せず自然体で丁寧さが伝われば、相手に不快感を与えることはありません。
江戸の会話や手紙は、始めに必ず「ご存じのように」といった言葉をつけていたそうです。これは、相手が自分より物知りだという前提で接する謙虚さが身についていたからです。
聞き手は自分が知っている話であれば、相手が話し出して間もなく「そのようですね」とか「聞いたことがあります」などと受けます。こうした相づちを返されたときは、話し手は内容の要点だけを簡単に話します。
聞き手が知らない話であれば「初めてお聞きします」「初耳です」と返します。この時は、話し手は内容を省かず詳しく説明するように心がけました。
「そのようですね」と相づちを打ったのにその話について聞き返したり、相づちを打たなかったりすることは、話し手に対して失礼にあたります。
少ししかつめらしく聞こえますが、謙虚な姿勢を表すこの基本が身につくと、思いやりのあるすっきりした会話が交わせるようになっていきます。