江戸しぐさは当意即妙、臨機応変の瞬間芸です。思いと同時に行為が発生する、思いやりの速球プレゼントとも言えます。
子供のころ母親に「くぎを取ってきて」と言われ、くぎだけ持って行ったら、「くぎと言われたら金づちも一緒に持ってくるものよ」と諭され、初めて「気働き」のようなものを知りました。何か頼まれたとき、子供なりに頭を使ってプラスアルファすると「気が利くね」とか「要領がいいこと!」とほめられていい気持ちになったものです。
旅籠(はたご)などでは、旅人の足をすすぎながら、わらじの鼻緒が痛んでいるのに気付くと、道中で切れたら難儀をすると思いやり、新しいものを用意してあげたそうです。
少し時代が下れば、汗びっしょりでたどり着いたお客を見たら「汗かいてますね」などと言う前に、おしぼりに添えてさっと冷たい水を差し出す、こんなしぐさが当たり前だったようです。相手が望むことを察し、つねに一歩先を見越して行動することがくせになっていたのでしょう。
先日、電車の終点で眠り込んでいる人がいました。誰も起こさないので、おせっかいな私は降りた電車にまた乗り込んで、ちょっと肩を触って起こし、素早く電車を降りました。
変な人が多いとか、痴漢に間違えられたら嫌だという声も聞きますが、やっぱりさりげなく起こしてあげられればと思います。これも他人を気づかう「いきな計らい」の一つですから。