目つきや表情、口のきき方、身のこなしには、その人の考え方や生き方、教養が正直に表現されてしまうものです。
「江戸しぐさ」のしぐさは「仕草」ではなく「思草」と書きます。「思」は思想、思考などの意味です。考えや思想がそのまま行為として出る、生活信条・哲学のことなのです。
私たちは、職に就くとき、あるいは入学や結婚などでも、ともすれば銘柄、ブランドで評価して失敗することがあります。
例えば会社なら、ビルの立派さや給料、福利厚生だけで就職を決めたり、名刺の肩書だけで相手を信用したりしがちです。
結婚でも、お互いに学歴や収入、見た目などで将来の伴侶を決め、一緒に暮らしてみて幻滅したという話をよく聞きます。最近では、長年連れ添った夫婦の「熟年離婚」も話題になっています。
江戸では就職でも結婚でも、しぐさで選べば失敗が少ないといわれたそうです。職場なら、働く人々が生き生きしているか、結婚なら、相手の考え方や身のこなしがきちんとしているかをしっかり見て、自分の感性を信じて判断するのです。
人を褒めるときも、ハード面(姿形)については、生まれつきの変えようがないものですから、とやかく言いません。自分の努力や才覚で築き上げた心ばえ、あるいは個性や特技といったソフト面を評価したそうです。今でも、そうした内面が感じ取れる美しいしぐさに巡り合えるとうれしいですね。