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2006.11.29(水)更新  江戸しぐさ

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年賀状はサイン送るきっかけ

 町は気が早いもので、もう「年賀状印刷引き受けます」なんて張り紙が目につきます。

 昔は、直接お年賀のあいさつに出向いたそうですが、次第に近場の相手にも手紙になり、はがきになり、今ではメールや電話、携帯ですませてしまう人も増えていることでしょう。

 年賀状にはお年玉がつき、パソコンなどで意匠を競う一方、虚礼廃止という意見も根強く、賛否の判断は人それぞれです。

 江戸では年始のあいさつ状を、前の年に初めて会って、何かしらの感銘を受けた相手には必ず出したのだそうです。また年に一度の年賀は、自分自身と友、ご先祖、御仏の四方に、「自分は生きていますよ」とサインを送る行為でもあったそうで、この心を年賀状という形にして定着させた先人の知恵は、伝承したいものの一つではあります。

 特に、商売が不首尾に終わった相手とか不仲になった友へこそ、真っ先に出したそうです。取り付く島がなかった相手でも、めでたい初春のあいさつは機嫌よく受け取ってくれるかもしれません。案外、取引再開とか友情復活のきっかけになるやも知れず、だめでもともとで試してみる価値はありそうです。これもぬけめない江戸商人の、人情の機微を知り尽くした知恵なのでしょう。

 とかなんとかいいながら、やっぱり年賀状をもらって、お正月にゆっくり一枚一枚丁寧に見ていくのって、理屈抜きで楽しいものですね。

(江戸しぐさ語りべの会・主宰)

題字・イラスト 伊藤美樹

越川 禮子

(2006年11月29日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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