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2007.2.14(水)更新  江戸しぐさ

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問われた自己責任

 上手な口上にのせられたにせよ、買った物が翌日腐ったら、今の消費者なら抗議に押しかける人が多いかも知れません。消費者の当然の権利として返品してしまうでしょう。

 しかし江戸の町方は、自分の判断で購入した物に不都合があっても、一方的に店のせいにはしませんでした。口コミで、「あの店の品物には気を付けろ」などと情報を流しはしますが、自分の買い物に責任を持ち、売り手と互角な付き合いをしていたのです。

 江戸の見せ物に、「おおいたち」「おおざるこざる」などというのがあったそうです。種を明かすと何のことは無い、「おおいたち」は板にべっとりと血(もちろん絵の具)が塗られたものだし、「おおざるこざる」は大小のざるがあるだけ。

 娯楽の多い現代の子供たちならいざ知らず、昔の子供は「おおいたち」がいると呼び込まれ、なけなしの小遣いを払って見に行ったのでしょう。どきどきしながら小屋の奥へ進むと、「大板血」を見ることになり、しまったと悔しがったそうです。

 しかし、自分で決めてお金を払ったのですから人のせいにはできません。うかつな自分を恥じ、泣き言は言いませんでした。仲間にも黙っています。

 そのとき町の大人たちは、子供たちがこれに懲り、世の中の厳しさをさとるよう、この小さな詐欺には目をつぶりました。一日も早い子供の自立を願った大人たちの養育は、こんなエピソードにもうかがえます。

(江戸しぐさ語りべの会・主宰)

題字・イラスト 伊藤美樹

越川 禮子

(2007年2月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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