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「掌の小説」× プロデューサー・坪川拓史さん
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20年の思い 桜に託す
川端康成の同名短編集が原作のオムニバス作品「掌(てのひら)の小説」。映画化にあたり、原作に登場しないオリジナルテーマ「桜」を用い、4人の監督が四つの物語を紡いだ。
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最終話の枝垂れ桜=福島県白河市 |
発案したのが坪川拓史さん(38)。原作の122の物語すべてから「死の香り」を感じた。「昨今の日本では遠ざけられている死の感覚を、桜の持つ『はかなさ』や『たたずまい』と織り交ぜて描きたかった」
監督としてトリノ映画祭グランプリ受賞歴を持つ坪川さん。本作では全体のプロデューサーとして、親交の深い3人の監督に声をかけ、うち1話の監督も務めた。劇中のピアノ演奏もこなし、アコーディオン奏者の顔も持つ。
背景も主人公も異なる4話でありながら、全編に桜をちりばめて「一つの物語」にみせた。第1話の一輪挿しが、最終話では桜吹雪舞う満開の枝垂れ桜となる。
「桜は役者の一人」と、登場する桜のコンセプトはすべて決めた。担当した第3話「日本人アンナ」で、原作では主人公とロシア人少女が銀座の街角で再会する場面を、映画では月明かりに照らされた桜並木の下で、と思い描いてきた。
だが、静岡県でロケが始まっても桜は決まらなかった。撮影と並行して深夜まで桜さがしの日々。県境を越え、神奈川の豆腐工場でひっそりと咲く20メートルほどの桜並木を発見したときは、思わずスタッフと手を取りあって喜んだ。3話の撮影予定日の前夜だった。いつしか桜前線とともにロケも北上し、最終話の桜を見つけたときは福島県まで来ていた。
高校卒業後、北海道から上京。当時付き合っていた女性に勧められたのが「掌の小説」だった。手元には、何度も読み返されて茶色にあせた、テープで補強だらけの文庫がある。「いつかこの小説を撮りたい」との思いは、出会いから20年たって、ようやく花開いた。(中山理恵)