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2005.4.7(木)更新  銀座ギャラリー日記

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青年は、画廊の扉を開けた

 「画廊は敷居が高いですね」とよくいわれる。

 大手の画廊の重い扉を思い切って開けると、受け付けのきれいな若い女性の「いらっしゃいませ」の声。画廊を開いて35年目の私でも、ちょっとどぎまぎする。また画廊の小卓を囲んで、アルコールなどを召し上がっている作家とお仲間の姿はよくある光景。作家の知人でない人は自分が邪魔者のように感じてしまう。

 でも初めの一歩を踏み入れてみれば敷居は決して高くない。 先日私の画廊で、生まれて初めて絵を買った青年がいた。画廊に集荷や配達にくるY運輸の青年だ。

 「絵ってどうしたら買えるんですか」と素直な疑問を口にした。新しい自分の部屋の何もない壁に一点飾りたいという。彼は何点かの候補の中から、色の明るい大きな版画を選んだ。現代ギリシャを代表する画家の作品だった。額装ができると「やっぱりいいですね」とうれしそう。画廊で絵を買うという気負いは全く感じられない。

 値段は中サイズのテレビを買えるほどだったので、「テレビはもう買ったの?」と聞くと、「必要ないんです」との答え。きっと彼はテレビを見るよりもっと有効な時間の使い方を知っているのだろう。いい絵はそこにあるだけで空間に充足感を与えてくれ、決して邪魔をしないから。

 画廊は基本的には美術品の販売で成り立っている。私も長い間にその生業に慣れてしまっているが、画廊の扉を重いとも思わず、軽々と一歩を踏み入れた青年のすがすがしさに、初めて絵を売った頃のことを思い出した。

(ガレリア・グラフィカ)
(2005年4月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 
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第1回 青年は、画廊の扉を開けた (2005/04/07)

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