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アーティストは「変化」する
最近ある新築のお宅の壁画制作に関(かか)わった。施主と建築家のメガネにかなったのは、ギリシャの国民的作家アレコス・ファシアノス。1974年以来の付き合いで何回もパリやアテネのアトリエを訪れたし、彼の壁画の仕事も見てきた。しかし今回は横7b、高さ3bほどの大きな漆喰(しっくい)壁にぶっつけ本番だ。失敗は許されない。
さっそくアレコスに会いにアテネに飛んだ。エーゲ海の小島ケアの別荘に誘われ、島唯一の社交場である波止場で毎夜の宴。気をもむ私を尻目にまさにギリシャ風の悠々だ。
とにかく壁画制作を承知してくれたが、来日の日時がなかなか決まらない。工事のスケジュールもありハラハラだった。
やっと、来日。作業が始まった。下絵から箔貼(はくは)りや色づけへとしばらく制作が進んだところで、建築家が「希望していたのとイメージも色も違う」といいだした。たしかにアイデアのもとになった過去の画集からのイメージは、生きている画家がいま創造する実物とは異なる。アレコスは筆を置いた。「それなら気に入る作品の写真を使ったらいい。色は君が塗ればいい」と建築家にいう。あらかじめ施主ととり決めたことを遵守(じゅんしゅ)したい、責任感の強い若い建築家は困った。私も弱った。気まずい沈黙が流れた。
そのとき偶然にも、施主が現れた。そしてにこにこしながら「僕はファシアノスさんの絵が大好きなのでお願いしたのだから、どうぞ自由に描いてください」と。この一言が皆を救った。アレコスはたちまち機嫌を直し、やがてすばらしい壁画が出来上がった。
(ガレリア・グラフィカ)
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