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2005.6.16(木)更新  銀座ギャラリー日記

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作品の下見と「ハプニング」

 ゴールデンウイーク、版画のオークションに参加するために、ニューヨークに出かけた。

 どのオークションでも下見は欠かせないが、特に版画は絶対にホンモノを見なくてはならない。だから皆、世界中からその地に足を運ぶ。オークション・カタログでは刷りの具合やコンディション(保存などの状態)の細部は分からない。「ややフォクシング(しみ)がある」「多少紙に経年のヤケがある」などとカタログに書かれていても、どの程度かは自分の目で見ないと分からない。

 しかし、作品にとって下見は常にリスクと隣り合わせ。特に版画やドローイングなどの紙の場合、下見で思わぬ事故や劣化が起こることがある。以前、すばらしいレンブラントの風景版画がオークションに出ていたときのこと。私は額から出してもらい仔細(しさい)に見た。お手頃な値段での落札など無理だな、とため息をつきながら額に戻した。もう一度見たくて翌日でかけた。なんと!無残にも版画の上の部分が破れている。誰かが不注意に扱ったにちがいない。

 ニューヨークでは、ちょうどピカソのリノカットを数人のディーラーたちがためつすがめつ、コンディションをチェックしていた。そのとき、「どーれ、私も」とある女性画商が拡大鏡を手に版画に顔を近づけた。すると、急にポタリと大きな水滴が版画の上に広がった。私を含め目撃した数人は息をのんで固まってしまった。件(くだん)の女性はあわてて首のスカーフで水滴を拭(ふ)き取った。

 その作品は6万5千ドルの高値で無事落札された。まさに垂涎(すいぜん)の的の魅力的な作品だった。

(ガレリア・グラフィカ)
(2005年6月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 

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