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アーティストの思いを聴く
長い夏休みの前のギャラリーには、訪問者が多い。夕刻、版画家の尾崎ユタカさんが、冷酒を片手にやってきた。次の個展の話になった。酒のせいか、ちょっとつっこんだ会話になっていく。従来のスタイルのままでいくか、それとも別の表現方法も採用したほうがよいか。尾崎さんは「やりたいことをやります」という言葉を残して帰っていった。入ってきたときよりもはればれとして。
長沢明さんも、奥さんと幼い息子2人とでやってきた。ちょうど、ロンドン留学中に世話になった澄江さんが帰国していて、偶然にギャラリーで再会。彼女のご主人ニコラスの個展も以前ウチでやっているのだが、彼女の悩みは15年のブランクののち、突然、画家復帰宣言をしたニコラスの作品のこと。「ちっとも好きになれない絵なの」と澄江さんはつらそう。
長沢さんは来年に個展をひかえている。作品に岩絵の具や膠(にかわ)、箔(はく)を使うのだが、いわゆる日本画ではない。最近では伝統的な材料や手法を使いながら、現代的な表現をする新しい作家たちの活躍が顕著である。長沢さんもその中のホープの一人。最近の画面にはどこかユーモラスな異形のトラが出現しているが、出来栄えについては奥さんの意見をきくという。特に自信のないときに、彼女の「ダメ」の一言を聞きたいらしい。
アーティストは頑固。他人は創作に手をかすことはできない。しかし、ときには他人の意見も聞きたくなるようだ。ギャラリーのできることは、アーティストと対話し、理解することだけ。でも、それがなかなかむつかしい。
(ガレリア・グラフィカ)
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