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コレクションに「はまる」喜び
昨日、イギリス人のコレクターが来廊した。ピカソの版画を見て「いくらか」ときく。最近、同じ作品を購入したそうだ。私の価格は、彼がロンドンで払った額よりもやや低かったが、ほっとしていた。他にも色々と集めていて「僕はもうアートのアディクトだ」と嘆きながらも楽しそう。アディクトとは、とらわれてやめられない人のこと。コレクターは多かれ少なかれアディクトである。好きなものに関心を集め、大枚を投ずることも躊躇(ちゅうちょ)しない。
九州に版画コレクション歴50年ほどのドクターがいる。当初は、棟方志功、池田満寿夫、駒井哲郎、浜口陽三などが中心で、この初期購入品がのちに強力な資金源となった。ドクターの版画への関心は、白と黒の織りなす緊張感や線の魅力へと向かい、徐々に日本人の版画からその源ともいえる西洋古典版画へと移行。折しも筑摩書房から「世界版画大系」全十巻が上梓(じょうし)された。西洋の古典から近代までの版画を網羅した画期的な出版で、これがドクターの強い味方となっていった。
そんなドクターのコレクションづくりをお手伝いさせていただいて26年になる。作品を売り、入れ替えながら、質と量が上がっていく。そして年に一度、作品の保存状態のチェックをかねて鑑賞会をするのが、いつの間にか習わしとなってきた。
コレクションもアディクションも深化する。じっと待って、念願の品を入手したときの喜び。その醍醐味(だいごみ)はもちろんコレクターのものなのだが、同時に画商の秘(ひそ)かな自負をも満足させてくれる。画商もすでにある種の中毒におちいっているのだろうか。
(ガレリア・グラフィカ)
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