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戦争の記憶と温かい風景
ヤン・モンティンという現代オランダを代表する版画家がいる。1983年の個展以来のつきあいである。頑丈な体躯(たいく)の大男で、80歳とはとてもみえない。そのヤンからDVDが送られてきた。彼の半生の映像である。20年ほど前に出版された自伝を読んだことがあるが、「地獄の黙示録」のコッポラ監督が映画化に興味を示したというほどのすさまじい体験が書かれていた。
それほどにヤンの過去は戦争と深くかかわっている。第2次大戦中に田舎の村で育った15歳の少年は冒険を求め、父の署名をまねてヒトラー・ユーゲントに入った。ナチが何者かも知らずに。水兵を経て、送られた先はロシア戦線。進むも戻るもならぬ雪と氷の壕(ごう)の中で、ヤンは紙切れにデッサンを描き続けて精神に異常をきたすのを免れたという。やがて終戦、ナチの協力者とされて3年間牢(ろう)に入れられた。のち帰郷したが、戦争に馴(なじ)染んだ身は平穏な市民生活に耐えられず、折からの朝鮮戦争に志願して再び戦場へ。途中、船はバンコクに寄港、初めてアジアの人々に出会った。
その後、ヤンは心身を癒やす場所を求めて再びアジアへ。が、70年のベトナムで目にしたのは、ナパーム弾に焼かれた子供たちだった。子供たちを安全な海外に移送するユニセフの仕事をヤンは引き受けた。
「贖罪(しょくざい)?こんなことで私の罪は消えない」とヤンはいう。そんなミッションの帰途、予告もなく画廊に新作を抱えて時々現れた。「温かい風景のようなやさしい人たち」に囲まれて制作したヤンの銅版画は、川や島や光の存在そのものを描き、心安らぐ。
(ガレリア・グラフィカ)
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