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2006.4.13(木)更新  楽しみ学 ことはじめ
楽しみ学 ことはじめ
「人それぞれの感性の違いが面白いです」と指導する田中逸齋さん=東京都港区南青山で(撮影・佐藤朗)
楽しみ学 ことはじめ
 毛筆の文字にひかれる。キーボード頼みの日常で、肉筆に触れる機会が限られるせいだろうか。一から入門して書道を習うほどの覚悟はないが、気軽にアート感覚で学べるなら楽しそうだ。部屋に飾る書を提唱する東京・表参道の「Carre MOJI(キャレモジ)」の教室を訪ねた。
書アート
懐かしくも新鮮な感覚
 天井から陽光が差し込む地下ギャラリーに机を並べたのは10人。その間を書家の田中逸齋(いつさい)先生(29)が回りながら、個別に指導していく。
 墨の香りがすがすがしい。筆にたっぷり墨液をふくませて、白い半紙にのせる。懐かしいのに、新鮮な感覚だ。まずは「山」をイメージして書くように言われた。
 まねする手本はなく、直しの朱も入れられない。自由で簡単そうだが、いざ紙に向き合うと、どう書いたものか。
 「山」の形だから△を書くと、先生は「字の印象が強いと、真ん中を高くする。山はいくつあっても、どこが高くてもいいんです」。
 頭では理解したつもりでも、書いてみると陳腐だ。やけくそになり、筆を寝かせて書いてみた。
 「これは字を忘れましたね」。ようやくほめられた。
 次は「楽」。なかなか字から脱却できない。私が書くと「お手上げ」のポーズのよう。先生が手を添えると筆が弾み、字は楽しそうに躍り出す。文字は筆づかいで印象がガラリと変わる。
 線に気持ちを託すことが書道の本質だという。刃先で切り裂くような細い線、一陣の風のような、かすれた線……。飽きのこない「極めた線」で、見る人の心に情景が広がるような書が目標だ。
 もう少し、もう1枚、と書いているうちに1回で半紙を59枚も使ってしまった。6回講座を修了すると自作を額装してもらえるが、これはなかなか緊張しそうだ。
 「線を極める」には、昔から伝わる名筆を学び、練習するしかない、という。小学2年生で書道を始め、全国展で何度も受賞した田中先生でも、作品を仕上げる時は100枚は書くとか。
 この教室は、プロの書家がインテリアとして飾れる作品を発表・展示するギャラリーとして始まったが、「自分も書いてみたい」と希望する人が相次ぎ、3年前に開講した。受講生は女性を中心に10〜80代の約170人。過半数が筆を手にするのは義務教育以来で、全国から通ってくる。
 始めて1年たつ川崎市の会社員、古田かおりさん(34)は「最初は文字をアートらしく崩すことに気を使ったが、次第に線に表情を出す意味が体感できるようになった」と手応えを感じている。額装した作品は海外在住のジャズ奏者に贈って喜ばれたという。
 4カ月前から通う埼玉県志木市の会社員、中島康成さん(57)は作品を自宅の玄関に飾っている。「初めは楽しいばかりだったが、思うように書けないと、創造性を尊重される分だけ苦しみもある」と話していた。
(鶴見知子)
悦楽  墨の香りに心が和む。筆を動かす感覚は理屈抜きで楽しい。ゆったりした流れに乗れると気分転換の効果大。

悦楽  思うような線は、なかなか書けない。感性を磨く必要もあり、道は非常に遠い。不慣れなせいもあって力が入ってしまい、終わると手首がずしりと重くなった。


楽しみ学 ことはじめ
 田中逸齋さんの作品「樹」。モダンな空間も和らぎそうだ(キャレモジ提供)。
【用意するもの】
 毛筆、墨液、半紙。

 キャレモジ書道スクール 東京都港区南青山5の10の8のキャレモジ(TEL03・5766・7120)では、(月)〜(土)、各コース1回1時間45分の6回講座。受講料4万2000円(額と額装代込み)。すずりや文鎮などは常備。プロの書家10人がモダンなインテリアとして制作した作品の展示、即売(5万〜50万円)も。

 インテリアにしたくなる書「夏」展 4月28日(金)〜5月7日(日)、午前10時〜午後8時、伊勢丹新宿本店(TEL03・3352・1111)本館5階モダン家具ショップ。約60点のキャレモジ作品を展示。無料。

 「キャレモジ――ワークス&インテリア」(2940円) 植野文隆・清水恵著、アシェット婦人画報社。
 「一文字ART」(3150円) 石飛博光・藏元訓征・仲川恭司著、日本習字普及協会。約100文字を正統な古典から抜粋し、現代の作品例と並べて掲載。
 「書愉道 双雲流自由書入門」(1470円) 武田双雲著、池田書店。独自の創作活動で知られる若手書道家が書道の基本や道具も紹介。


(2006年4月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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