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この日は「菜種きんとん」と「草もち」を習う。教室を主宰する清真(きよし)知子先生(45)から手渡されたレシピは驚くほどシンプルだ。
「洋菓子ほど何工程にも分かれていないので、2時間ほどで作れますよ」と清先生。住まいのある神戸市で茶道を教えていた時、思うような和菓子が手に入らず、手作りしたところ評判になり、10年にわたり教えている。先生が参加者4人の前で実演し、手順を教わったらいよいよ実践だ。
ところが、簡単に見えた作業ほど難しい。「草もち」の餅をつく作業。ヨモギと上新粉などをまぜて蒸しあげたものをさらしで包み、たたみ込む要領でついていく。先生はリズミカルに餅をついていくが、こちらはさらしにベタベタとくっつき大苦戦。危うく餅がなくなってしまいそうになった。それでもブツブツとした表面はやがてつややかに、色はくすんだ緑色から、ぱっと鮮やかなヨモギ色に。出来たばかりの餅を前に、思わず笑みがこぼれる。
見なれぬ道具も登場してきた。「菜種きんとん」にまとわせる「あんそぼろ」作りに必要な、籐(とう)の「そぼろこし器」と、あんそぼろを扱う時に使う「きんとん箸(はし)」。いずれも家にない道具だが「同じくらいの編み目のザルでも代用できます。箸は竹箸の先を削ったらいいですよ」と先生。黄色と黄緑の2色のあんは、手早く扱わないと手の温度が伝わってベタベタになり、手や道具にあんそぼろがまとわりついてしまう。
「菜種きんとん」の仕上げ、あん玉にあんそぼろをつける。「おいしそう、今すぐ食べたい」と喜々と作業を進めたところ、もっさりと異様な大きさに。雑念を消して再度挑戦。けなげに咲く一輪の菜の花を想像して作業を進めると、程よい大きさに出来上がった。頭に思い描くことが、手を伝わりそのまま形として現れるようで不思議だ。
季節の到来を喜ぶ、豊作や健康を願う……。和菓子には様々な役割がある。「その日いらっしゃるお客様を想像して作るんです」と清先生が言うように、茶会での和菓子は、同席した人同士の会話がはずむよう「仲人」のような役割も担う。具象的な和菓子より、色や香り、食感などを駆使して伝わる和菓子のほうが茶会では会話が盛り上がり楽しいのだとか。
黄、黄緑、ヨモギ色……。出来上がった2種の和菓子を箱につめると、気分はたちまち春になった。清先生が繰り返し話していた言葉が浮かぶ。
「和菓子で大切なのは、イメージなんですよ」
(蒔苗沙都子)
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季節に対し敏感になり、優雅な気分に。使った器具は水洗いで済むなど、洋菓子に比べてヘルシーであることを実感できる。
蒸し器、数枚の清潔なさらしなど、必要な道具は意外と大がかり。使う素材によっては近所のスーパーでは事足りない場合も。
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完成した「菜種きんとん」。きんとんの色を変えれば、梅雨や紅葉をイメージしたものに応用できる。
【用意するもの】
エプロン、てぬぐい、筆記用具。
◆さろん閑遊 年6回の和菓子教室を開催。次回は6月23日(金)〜28日(水)、各日午前10時と午後2時からの2回開催。テーマは「蓮根餅(れんこんもち)」と「水無月」。5000円。各回定員6人。電話またはホームページから要予約(TEL078・392・6700、http://www.kanyuu.com)。
◆手作り和菓子1日教室 6月10日(土)、午後1時半〜4時、東京都新宿区高田馬場1丁目の東京製菓学校(高田馬場駅)。「和菓子の日」(6月16日)にちなみ、「手作り和菓子教室」を開催。1000円。定員210人(抽選)。
往復はがきに郵便番号、住所、氏名、性別、年齢、電話番号、同伴者氏名(1人まで)を記し、郵便番号151・0053渋谷区代々木3の24の3、東京和菓子協会「手作り和菓子教室」朝日係(TEL03・3375・7121)。5月25日消印有効。
◆「和菓子屋レシピ」(1575円)、ジャパン・プランニング・アソシエーション。人気の和菓子店の秘伝レシピを、職人のコツなども交えて紹介。カラー写真の手順入り。
◆「おもてなし和菓子を手づくりで。」(1680円)、金塚晴子著。小学館。素材や製菓器具の説明も詳しく、初心者向け。
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