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2006.5.25(木)更新  楽しみ学 ことはじめ
楽しみ学 ことはじめ
農家の人(左)の指導で植えていく。子どもも真剣な表情=ともに千葉県鴨川市で(撮影・佐藤朗)
楽しみ学 ことはじめ
 湯気のたつ炊きたてご飯をほお張る時の幸せな気持ち。3食のうち一度もご飯を食べなかった日の物足りなさ−−。米は私たちの生きる糧、元気のもとだ。でも稲作のことは何年も前に学校で習ったきり。田んぼに入ったこともない。階段状の棚田で行われるお米作りスクールに参加しようと千葉県鴨川市に向かった。
田植え
1本ずつ思いを込めて
 東京から2時間弱。バスから降りると空気が違った。畑や棚田がすぐそこに広がり、遠方は山で囲まれている。
 農協観光が主催するこのお米作りスクールは11年目。最初は親子が対象だったが、団塊世代にも農業に親しんでほしいと、昨年から大人コースをつくった。参加者は子どもを合わせて73人。約18eをみんなで植え、秋に約600キロの米を収穫する予定だ。
 棚田は機械が入れず、手作業になってしまい効率が悪い。農家の高齢化や後継者不足で荒れ放題だった棚田を参加費で整えて「体験の場」とすることで、景観を保全する役割も果たしている。
 Tシャツにひざ丈に切ったズボン、帽子をかぶり首から手ぬぐいをかける。足は素足だ。本格的に地下足袋を履いている人もいる。
 おそるおそる棚田へ足を入れた。生ぬるい泥が足にまとわりつき、歩くたびに足の指を泥がすり抜けていく。なんとも言えず気持ちがいい。
 この辺りで作っているのは、長狭米のコシヒカリ。この道60年、地元農家の遠藤なみさん(78)に習って少しずつ稲を植えていくが、なかなか難しい。稲が弱々しく横に傾いてしまったり、植える間隔がずれてしまったり。泥の中をかがんで植えて行くので足腰も少ししんどい。それでも、「おいしいお米ができますように」、そう思いを込めて植えていく。
 何列か植えたところで同じ班の和田とみ子さん(62)が私の肩をたたいた。「見て。私たちが植えたところは稲が酔っぱらっているみたいね」。見るとたしかによろよろ。その横で遠藤さんの植えた稲が、空に向かってすっくと立っている。不安に思っていると、「伸びるとみんなまっすぐになるから」と遠藤さんは笑った。
 その遠藤さん、とにかく速い。しっかりとした足つきで、私がもたもた苗を取り分けている間に3本は植えている。小さな背中が頼もしい。ふと手を休めて一息つくと、風がさわさわそよいでカエルの鳴き声が耳に心地よかった。
 植え終わった棚田を大学生の渡辺由美さん(20)と見て回った。上まで登り、植えたばかりの棚田を見下ろした時、「すごいなぁ」と自然と言葉がもれた。昔の人たちが苦労と工夫を重ねて築きあげたこの文化を、改めて誇りに思った。
 「私たちの」田んぼが秋にはそろって稲穂を揺らす。渡辺さんが笑って言った。「今日は楽しかった。農家に嫁ぐのもいいかも」
 ほどよい疲労感と共に帰路につく。実りの秋が待ち遠しい。
(熊坂麻美)
悦楽  自然の中で緑や土に触れ、いつもと違う景色に癒やされる。自分で作ったお米の味も楽しみ。

悦楽  日頃の運動不足もあり、翌日は腕、足、背中などが筋肉痛に。日焼けにも要注意。


楽しみ学 ことはじめ
 上から見た棚田。土手にはセリが生え、イモリやカエルの姿も。
【用意するもの】
 帽子、汚れてもよい服装、タオル、ビーチサンダル、着替え、雨具(かっぱ)

 ふれあい田んぼ教室 バスコース
 田植え6月17日(土)、稲刈り10月7日(土)、栃木県佐野市、発着は上野駅。4000円、小学生以下2000円(体験2回セット、バス代込み)。定員80人。問い合わせは農協観光03・5297・0273。
 まつだい棚田バンク
 新潟県十日町市松代の休耕田に出資する人を集め、田んぼを守り育てる取り組み。申し込み口数に応じて収穫米が配当され、田植えや稲刈りにも参加できる。趣味農業コース、レジャー農業コース、遠距離支援コースの3種。いずれも、25平方メートル1万円(収穫米の最低保証量7.5キロ)、100平方メートル3万5000円(同30キロ)。問い合わせは事務局025・595・6180。

 「バケツ稲 12カ月のカリキュラム」 農山漁村文化協会、1200円。1粒の種もみから稲が成長し、収穫するまでのプロセスを手軽に体験できるバケツ稲について、小中学校での授業課程を紹介。家庭でも実践できそう。


(2006年5月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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