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2006.11.2(木)更新  楽しみ学 ことはじめ
楽しみ学 ことはじめ
接着剤や漆の乾燥を待つ時間を利用して、別の器の繕いを進めていく。机上では傷ついた器たちが、自分の順番をじっと待っていた=東京都世田谷区赤堤で(撮影・佐藤朗)
楽しみ学 ことはじめ
 マニアではないが、古道具市で手ごろな値段の器を見つけては食器に使っている。気に入った器ほど食卓への登場が頻繁になるだけに、割れたり欠けたりしてしまいがち。捨てるのは忍びないと、東京・世田谷の「平澤流金繕い教室」にかけこんだ。漆と金粉を使う伝統的な修繕方法を誰もができるように工夫した技法が学べるという。
金繕い
割れた器に命吹き込む
 茶道具や美術品など、高価な器の修繕方法という印象の「金繕い」。「敷居が高いのでは」と動悸(どうき)がしていた小心者の私は、1500円ほどで購入し、豪快に割ってしまった染め付けの皿を恐る恐る差し出した。
 「きれいに割りましたね。かけらが全部そろっているので、繕いは楽ですよ」と、講師の平澤白水先生(51)は器のかけら1枚1枚をなでた。最近は茶道や古美術品に通じた「玄人」よりも、思い出のこもった器、愛着のある器を直したいと教室を訪れる人が多いのだという。「器の価値は値段ではありません。愛情や思い出がお金に換えられないのと一緒です」
 器の壊れ方はどれ一つ同じものが無いので、修繕方法も様々だ。私の皿はふちから枝状に亀裂が入り、五つに割れていた。かけらを組み合わせてビニールテープで仮留めし、割れ目に染み込ませるように瞬間接着剤を注入、乾燥を待ってはみ出した接着剤をカッターの刃先で削る。その手を筆に持ち換えたら、継ぎ目に沿って、かぶれにくい合成漆で線を引き、その上から金粉をまいて、化粧を施すことにした。
 「接着に漆や小麦粉を使うのが従来の方法ですが、時間と手間、技術もいるので、初心者にも扱いやすい道具で代用します。その方が生き返る器も増えるでしょ?」と平澤先生。
 あたりを見回すと、なるほどみなさんの器も作業も千差万別だ。主婦の高木真弓さん(45)はふちが小さく欠けた清水焼の茶わんを繕っていた。破片が無いため、市販されている粘土状の接着剤を使って欠損部分を埋めていく。「お嫁にくる前から大切に使っていたお茶わんです。同じものを買うこともできるけど、愛着がわいちゃって」とほほ笑んだ。
 その隣の席の女性の手元には九谷焼の急須や、年代ものの小皿に交じって、バラの模様のティーカップが修理を待っていた。「洋食器も繕えるんですか」と思わず声をあげると、「もちろんよ。ティーセットが一客欠けると寂しいからって、お友達に頼まれたの」と答えたのは主婦の石黒道子さん(64)。食器棚の奥に眠る傷ついたあのカップが目に浮かんだ。今度はあれを繕おう。
 3回受講して、継ぎ目を「金の糸」で繕われた皿2枚が、見事現役に復帰した。青い波の文様の間に間に、金の小枝が浮かぶようだ。「割れる前より趣があるかも」と眺めていたら、平澤先生に声を掛けられた。「それを『景色がいい』とめでるのが、日本人の美意識なんですよ」
(岡澤香寿美)
悦楽  永遠の別れと思った器が繕いで息を吹き返した喜びは大きい。手をかけただけあって、ますます愛着がわく。

悦楽  金繕いは1日にして成らず。接着剤や合成漆が乾くまで、ただひたすらじっと待つしかない……。気の短い人には鍛錬の場になるかも?


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 (右)繕われている器なら、もてなしの席でも使うことができる(左)合成漆は釣り具の塗装用に市販されている
【用意するもの】
 割れ、欠け、ひびなど、直したい個所のある器1〜2個(ない場合は教室に教材あり)。

 平澤流金繕い教室 東京都世田谷区赤堤1の30の14(経堂駅、TEL03・3325・7774)。(木)(金)(土)(日)の午前10時と午後1時、各2時間。初心者におすすめの基本科(3回授業)は1万5750円。要予約。ホームページでも申し込み可(http://www.kintsukuroi.com)。

 「白水の手仕事展・再生の美U」 11月5日(日)まで、正午〜午後7時。平澤先生の金繕い作品をはじめ、教室に通う生徒の作品を展示。教室併設のギャラリー「ガラージュ・ベー」で。来年1月14日(日)〜28日(日)に同ギャラリーで第3回展も予定。
 金座GINZA 東京都中央区銀座8の5の5(TEL03・3573・1001、http://www.goldsilver.co.jp)。金繕いにかかせない金粉や漆、筆の品ぞろえが豊富。午前11時〜午後8時((月)は6時半まで)。(日)(祝)休み。インターネットでの通販も可。

 「やさしい金つくろい入門 食器を直す、茶道具を直す」大野雅司・野上忠男著、淡交社、1575円。合成漆を使った手軽にできる金繕いから、本漆を用いる本格的な繕い方まで、写真に沿ってわかりやすく解説。


(2006年11月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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