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2006.11.30(木)更新  楽しみ学 ことはじめ
楽しみ学 ことはじめ
カッターの持ち方や刃先の入れ方などの基本動作が大切。右は講師の津久井さん=東京都墨田区で(撮影・佐藤朗)
楽しみ学 ことはじめ
 年賀状、どうしようか――。頭を悩ませる季節がやってきた。失敗なくきれいに作れるパソコンが毎年の製作手段になりつつあるが、何だか少し味気ない。手軽に私らしさが出せる方法はないだろうか。少々欲張りな願望を抱え、東京都墨田区で開催される教室へ向かった。
消しゴムはんこ
ひと彫り 思いを込めて
 この日の講座は年賀状用に、来年の干支(えと)「イノシシ」の図柄と、「賀正」の文字のはんこを彫る。
 「中学校の授業中の内職がきっかけで……」と話す講師の津久井智子さん(26)は、大学卒業後から本格的に「消しゴムはんこ職人」として活動を開始。この教室では、津久井さんが体得した「作りやすい技」を伝授してもらえる。
 「彫る」と聞くと、小学生の時に使い慣れない彫刻刀と格闘した苦い記憶がよみがえる。しかし、軟らかい消しゴムの場合、たいていの作業は工作用のカッターで対応出来るのだとか。トレーシングペーパーに鉛筆で下絵を描き、消しゴムにこすりつけて絵柄を転写。線に沿って刃先で切れ込みを入れ、底からくりぬくと、わずかな力でポロリと削り取れた。約20分で、何とか「イノシシ」が誕生。文字の「賀」を彫る場合は、「力」「口」「貝」に分けて彫ると要領良く彫れるそうだ。
 途中、恥ずかしい間違いに気が付いた。彫ることに集中しすぎたせいか、「貝」の「目」が、いつの間にか「日」になっていたのだ。やり直し――。落胆していると、「『日』にもう一本切れ込みを入れてみましょうか」。頼りない線を無理やり彫り、なんとか「目」に復活させた。こんな細かな修正も消しゴムだからこそ対応できる。「失敗じゃないんです。味ですよ、味」。1時間もかからずに、二つのはんこが完成した。
 習った技を応用し、すでに楽しんでいる参加者もいる。自分の名前をアレンジした幾何学模様のはんこを彫った人は、2色のインクを交互に使い、はがき全面に押している。すると、千代紙のような雰囲気の一枚に仕上がった。津久井さんは、過去の作品の中から、「丸い太陽」「山」「羽を広げた鶴」のはんこと華やかな色のインクを選び出し、ポンポンとはがきに押している。出来たのは「初日の出の中を飛び立つ鶴」というおめでたいワンシーン。小さなはんこでも、押し方や組み合わせ方次第で、雰囲気はいかようにも変わる。可能性は無限大だ。
 さて、私の「イノシシ」を紙に押してみる。「つぶらな瞳」を彫ろうと力んだら、手が滑ってしまったあの「失敗」、どうなっているだろう。そっとはんこを離すと、右向きにトコトコと走っていくイノシシが現れた。逆立った毛、つり上がった目。「猪突猛進(ちょとつもうしん)」という言葉を添えて年賀状に仕上げると、来年への意気込みが伝わるだろうか。それとも、左向きに走る「友人」をもう一匹彫ってあげようか。
 一枚の年賀状が、ぐっと楽しくなりそうだ。
(蒔苗沙都子)
悦楽  世界に一つだけのはんこが手軽に出来る喜びは格別。木版画ほど力はいらないので、子どもやお年寄りもできる。専用のインクを使えば、布やガラスなどにも押せる。

悦楽  刃物を使うので、けがをする可能性も。軟らかい消しゴムとはいえ、細心の注意が必要。細かい作業が多いので、根を詰めて作業をすると、目や肩がつらくなる。


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 (写真上)必要な道具。家にありそうな身近なものが多い
 (写真下)組み合わせ次第で華やかな年賀状に仕上がる
【用意するもの】
 カッター、消しゴム、トレーシングペーパー、彫刻刀、はんこ用インクなど。

 ヒノデワシ 東京都墨田区東向島1丁目(曳舟駅、TEL03・3619・0456、http://www.hinodewashi.co.jp)。1回約2時間。3000円(道具代込み)。定員10人(要予約)。小学4年生から参加可能(小学生の場合は保護者同伴)。年内の受付は終了。来年1月以降の予定は要問い合わせ。
 池袋コミュニティ・カレッジ 西武池袋本店イルムス館8階(池袋駅、TEL03・5949・5483)。来年1月16日、30日と2月、3月の第1・3(火)の午後1時半〜3時半。入会金6300円、受講料1万8900円(全6回、教材費別途7644円)。

 「はんけしくん ことはじめSET」(ヒノデワシ、1050円)、消しゴム1枚(5×7.5センチ)、彫刻刀(三角刀)、トレーシングペーパー、インクなど、必要な道具と説明書入り。

 「消しゴムはんこ。で年賀状」(主婦の友社、1575円) 津久井さんが、基本的な彫り方と年賀状製作のアイデアを豊富な写真付きで解説。
 「消しゴムで和のはんこ」(雄鶏社、1260円) 作り方や活用方法を、四季折々の図柄とともに紹介。我那覇陽子著。


(2006年11月30日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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