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うっそうとした森に包まれた東京都渋谷区の明治神宮。暗雲たちこめるあいにくの天気に鬱々(うつうつ)としながら社殿に向かったその時、結婚式の列が目に入った。しずしずと歩く、白無垢(しろむく)の花嫁。降り出した雨にぬれないよう、巫女(みこ)が差し掛ける真っ赤な和傘――。この強烈な色彩を、一句にしたい。
初心者を対象に昨年開講した卯浪(うなみ)俳句教室。講義と吟行、句会を組み合わせて基礎を学ぶ。「感動は季題(季語)に託して、見たままを素直に詠む。鍛錬すると、その中に主観が出ます」。本業は中学・高校の数学教師という、今井肖子先生(52)のテキパキとした説明に学生のようにうなずき、スタートラインに立った。
吟行は、おのおのが季題を収めた「歳時記」を片手に原宿周辺を歩く。雑踏でこぼれる吐息、玉砂利に足をとられる子ども、風に巻上がるコーヒーの湯気。ささいな瞬間も、俳句には格好の題材になる。しかし、なかなか17文字に納まってくれない。
「にび色の空白無垢の花嫁にさす赤い傘」。色の印象を連ねてみたものの、季題がない。「大寒や白無垢に赤い傘さす」では、声に出すとすこぶるリズムが悪い。言葉を足したり引いたり、入れ替えたりしているうちに、句会の時間が迫ってきた。
「一語一語は平凡でも、五七五にしたときに思わぬ表現になるのが俳句の魅力」と、今井先生は話す。祖母も母も、俳人という。それでも、始めたのは45歳の時。「退職後に始めるか、いまか。15年の差は大きい」という母の言葉に納得し、1年間ひたすら俳句を詠んでその深みにはまっていった。「私にとって、人が発見した定理を伝えるのが数学なら、俳句は自分で一から生み出すもの。その違いがおもしろいですね」
苦しんだ末に、私が句会に提出したのは「大寒の雨白無垢に赤い傘」。名前を伏せた句の中から、それぞれが気に入った5句を選句用紙に記し、代表者が詠み上げる。誰にも選ばれない恐怖にうつむいて耐えていると、最後に先生の選に入った。
古来ここちよいリズムとして伝わってきたという、五七の調べ。今井先生はそれを「日本人のDNA」と表現した。「原宿の音を吸ひ込む秋の空」「初夢や目覚めて靄(もや)のかかりけり」……今までつくった句をつぶやくと、その時の景色と感情とが、確かに私の中に刻まれているのを感じる。
教室の初日にもらった俳句手帳が、財布やケータイと並んで手放せない持ち物になった。
(加藤千絵)
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句会で自分の句が選ばれ、詠み上げられた時の喜びは格別。あとで読み返すと、その時の空気がありありと感じられる。
吟行の1時間で季題を意識しながら題材を探し、3句程度を作るのはかなり難しい。句会の時間が迫るあせりの中で「生みの苦しみ」を痛感する。
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今井肖子先生の俳句手帳。俳句と、詠んだ日にち、場所がびっしりと書き込まれている
【用意するもの】
紙とえんぴつ、歳時記
◆卯浪俳句教室 6月〜来年3月の月1回、東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬の各都県で開催。5月に体験教室(無料)も。60歳未満の初心者対象。受講料2万4000円(全10回)。はがきかファクスに郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を記し、郵便番号108・0073東京都港区三田3の4の11、日本伝統俳句協会「俳句教室」係(TEL03・3454・5191、FAX3454・5192)。
◆初めてつくる人の土曜俳句 東京都港区南青山1丁目のNHK文化センター青山教室(青山一丁目駅、TEL03・3475・1151)。4月14日〜9月8日までの第2・4(土)(全11回)。午後3時半〜5時半。講師は石寒太さん。受講料3万3495円(入会金5250円が別途必要)。他の教室はホームページ(http://www.nhk-cul.co.jp/)を参照。
◆鎌倉俳句&ハイク 鎌倉虚子立子記念館など神奈川県鎌倉市内33カ所に俳句ポストを設置。1月、4月、7月、10月の各月末に締め切り、入選作品を市内の公共施設やホームページ(http://www.kamakura-haiku.com)で発表する。参加無料。問い合わせは実行委事務局(0467・22・5010)。
◆映画「恋は五・七・五! 全国高校生俳句甲子園大会」DVD(3990円、04年、東北新社)。 実際に松山市で開催されている「俳句甲子園」を目指し、高校生らが奮闘する様を描いた青春コメディー。俳人の夏井いつきさん監修。
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