「名は体を表す」という言葉通りの山が剱岳である。穂高岳、谷川岳と並ぶ日本三大岩場だ。とんがり具合は剱岳が一番で、普通の登山者には山頂に立つことは不可能のように見えるのだが、この山に登りたいと願う中高年登山者は多い。「技術不足のまま難峰・剱岳にチャレンジしないでくださいね」と警告を発すべく、百山の中にこの山を加えた。
今夏も剱岳に登った。表玄関である室堂へのアプローチは富山起点がおすすめだ。長野県側の扇沢からだとトンネルが多くて景色が楽しめない。夜行はやめにして、富山で前泊する。駅近くの飲み屋で大きなイワガキに感動しながら前祝いの杯を傾けるのは、中高年登山の大いなる楽しみである。
翌朝は一番の富山地方鉄道に乗る。車窓から仰ぐ立山・剱の連峰は朝日を浴びて神々しい。立山駅から美女平まではケーブルカーだ。美女平から室堂へはバスの旅だ。ブナの林を抜け、称名滝を遠望。弥陀ケ原を走るようになると大自然のスケールの大きさに気分爽快(そうかい)。剱岳に登らなくても、室堂周辺を散策、帰路に黒部ダムを見学して大町温泉郷に立ち寄れば、体力に自信のない方にもおすすめのネーチャー・ツアーになる。
さて、僕たちは剱岳を目指す。室堂から4時間、雷鳥坂の急登に耐え、別山乗越に立ち、剱沢源頭を下ればこよいの宿、剱沢小屋が待っている。
「こんにちは」と声を掛けて小屋に入る。「おーっ」とオーナーの佐伯友邦さん(62)が迎えてくれる。山岳救助隊をテーマにしたテレビにも出演した剱岳の主のような山男だ。
「剱岳に登る登山者のレベルが年々低下している」とは佐伯さんの指摘だ。岩登りの基本技術である三点確保をマスターできてない登山者が多く、難所の「カニの縦ばい」「カニの横ばい」で立ち往生、大渋滞になることが時々ある。
三点確保とは、体を保持する両手両足のうち3点で体を保持して1点のみ動かす技術のこと。これをマスターすれば、安心安全に剱岳にチャレンジできる。
我がパーティーはしっかりトレーニングしてきたから、難所もスイスイ通過。所要時間の1・5倍、上りに4時間半費やして笑顔で剱岳の頂上に立ち、30分大休止。下りは慎重に足を運んで4時間で無事剱沢小屋に帰還した。
※剱岳の標高は10月28日現在です。