普賢岳には2回登っている。登山は楽しかったが、山を離れて長崎という土地を味わうことができなかった。その土地と縁なくして山を語ることはできない。登山中は困るが、長崎の街で雨に降られてもみたい。
普賢岳は雲仙火山群の主峰である。島原半島のほぼ中央に位置し、長崎県内の最高峰だった。過去形なのは90年11月、約200年ぶりの大噴火があって、その後、普賢岳より127メートル高い平成新山が生まれたからだ。この噴火は火砕流と土石流を繰り返し、雲仙火山群は登山禁止になった。解禁は98年のことである。
雲仙岳というのは、普賢岳、国見岳、妙見岳を擁する山群の総称だ。この三山がそれまで県内の標高1位から3位だったが、平成新山にトップを譲って、2位、3位、4位になった。登山コースはいくつかあるが、ぼくが2000年と今年の2回楽しんだコースがよく歩かれているようなので紹介したい。
仁田峠まではバスかマイカーで行く。初夏にはミヤマキリシマが一面に花開き、あたりをピンク色に染めるという。ぼくは歩いていないが、雲仙公園からスタートすれば、池ノ原ミヤマキリシマ群落の遊歩道を通って仁田峠まで、約1時間半のハイキングが楽しめる。
普賢岳へはロープウエー仁田峠駅から右へ妙見岳を横切るようにして薊(あざみ)谷沿いの道に入る。登り切ったところが普賢岳と国見岳の鞍部(あんぶ)の紅葉茶屋。鞍部とは山と山の間のへこんだ所で、鞍(くら)状になっているところからそう呼ばれる。
このあたりから上は、冬は霧氷の名所だ。訪れたのがいずれも3月上旬だったので、2回ともきれいな霧氷に出合うことができた。頂上はここからひと登り。
頂上に立つと、平成新山がまっさきに目に入る。晴れていれば阿蘇や九重の山々が見え、足下には天草の海が広がる。山の品格は1級、眺望も文句なし。さすがに、我が国で最初に指定された国立公園のひとつだけのことはある。
眺望を堪能したら、国見岳を往復し、妙見神社にお参りして仁田峠に下る。この周回コースはゆっくり歩きで3時間。東側山麓(さんろく)に島原温泉、南西側に雲仙温泉がある。山の空気をたっぷり吸ったら、潮の香りをかぎに島原温泉へ行こう。