昨年の秋、台風の合間を縫って四国を訪れた。初日は徳島県の剣山に登った。その後、祖谷渓(いやけい)に沿って阿波池田へ行き、石鎚山(いしづちさん)の玄関口、伊予西条に向かう予定でいた。しかし、祖谷渓への道は台風で通行止めで、別ルートをとった。
石鎚山は1982メートル、西日本最高峰である。役小角(えんのおづぬ)が初めて登ったと伝えられ、山岳信仰でにぎわう霊峰でもある。7月初旬の例祭には、石鎚神社成就社から山頂まで白装束の列が続くという。
成就社からが表登山道であろう。山麓(さんろく)下谷から山頂成就駅までロープウエーで8分。遊歩道をたどると30分ほどで成就社がある。左奥に山門があり、登山口を示している。
始めは下り坂で、下りきってから八丁坂の登りにかかる。前社森(ぜんじゃがもり)を越え、ブナ林を抜けると夜明(よあかし)峠。夜が明けるように前方がひらけ、アルペン的な光景の石鎚山北壁が迫ってくる。
この先に一ノ鎖、二ノ鎖、三ノ鎖という修験の場があるが、迂回(うかい)路があるので心配ない。しかし、最後の岩場なので、緊張感を味わわせてくれる。登り切ると頂稜(ちょうりょう)の一隅に出る。頂稜とは頂上の稜線のことで、石鎚山山頂のすみっこに立ったということだ。
山頂は最高点の天狗岳、弥山(みせん)、南尖峰(なんせんぽう)からなる。ぼくたちが立ったのは弥山の一隅だ。どの頂に立てばその山に登ったことになるのか、ルールはない。初登頂を競う冒険登山ならともかく、健康維持のため楽しむ登山はそんなことを気にせず、自分で決めてやればいい。
石鎚山は弥山に立てば万歳だ。石鎚神社頂上社が鎮座しているし、頂上山荘もある。西日本の最高峰とあって、晴れて空気の澄んでいる時なら九州の阿蘇山、山陰の大山も見えるという。天狗岳は岩尾根伝いで危ないから無理をすることはない。
下山は土小屋へのコースがおすすめ。二ノ鎖下から東へ、瓶ケ(かめが)森から笹ケ峰へと連なる石鎚山脈の主稜(しゅりょう)をたどる。よく整備された山道をゆるゆると下ると土小屋に到着する。ロープウエーの駅から弥山の頂上まで4時間、土小屋まで下り2時間半を見ておけばいいだろう。
土小屋から松山まではバスで約3時間。道後温泉で汗を流してから飛行機に乗りたい。