安芸宮島の弥山(みせん)。島がそのまま山になっている。「利尻島はそのまま利尻岳であった」というのは、深田久弥さんの「日本百名山」の有名なフレーズだが、弥山は利尻岳ほどシャープではない。
山の形が仏教の聖なる山、須弥山(しゅみせん)に似ているのでそう呼ばれていたのが、いつの間にか「須」がはずれて弥山となった、とガイドブックにあった。「厳島神社では御山と書くことが多い」とも併記されていた。「御山」と書き「みせん」と読む方がぼくは納得できる。
登山教室に講師として招かれて、初めて弥山に登った。1日目は広島市内で「バテない歩き方」のレクチャー、2日目に宮島を訪れた。宮島口駅から連絡船に乗る。大鳥居がぐんぐん近づく。実物はさすがにありがたみがある。
「さて、本日の課題は読図です。みなさん地図と磁石を出してください」とぼく。地図は2万5千分の1地形図「厳島」を用意。磁石はシルバ社製のコンパスがお薦めだ。実際の地形に合わせて地図を正しく置くことを正置という。そのために必要な道具が磁石である。
オロオロしている人がいる。聞けば鉄を引き寄せる磁石を買ってきたという。デパートで磁石が欲しいといったら文具売り場を教えてくれたので、そこで買ったという。彼女1人を除き、大笑い。
表参道商店街を抜ければ厳島神社だ。登山の無事を祈願してから多宝塔にむかう。ぼくたちは多宝塔コースを登って紅葉谷コースを下る計画だ。ほかに、大聖院、大元谷、博打尾(ばくちお)、奥の院コースと、弥山への登山コースは計六つある。
登るにつれ足下に海が広がり、大鳥居が仁王立ちしている様がよく見える。古戦場跡の駒ケ林を越えて仁王門に下り、登り返せば弥山頂上だ。瀬戸内海に浮かぶ島々の眺めが気分をゆったりさせてくれる。登り3時間、下り1時間30分。
宮島は日本三景の一つで世界文化遺産にも登録されている。千畳閣、不消霊火堂(きえずのれいかどう)、三鬼堂など、見るべき名勝や史跡が少なくない。3月に予定している弥山登山では宮島に1泊することになっているので、ゆっくり宮島を楽しめそうだ。
さて、くだんの彼女、大爆賞として貸してあげたぼくの磁石をプレゼントした。読図をしっかり勉強してくださいね。