四阿と書いて「あずまや」と読む。四阿とは、壁がなく四方の柱だけで屋根を支えている小屋。庭園などに設けられ、山道でも時々みかける休憩舎だ。山容が屋根の形に似ていることが山名の由来になっている。
深田久弥さんは「日本百名山」で四阿山を「ピッケル・ザイル党には向かないかもしれぬが、しみじみした情緒を持った日本的な山である」と紹介している。
浅間山から湯ノ丸山、鳥居峠、四阿山、土鍋山(どなべやま)、御飯岳(おめしだけ)、万座峠へと連なる山稜(さんりょう)は長野県と群馬県の県境だ。山稜は、太平洋と日本海との分水尾根。四阿山東面を流れる水は太平洋に、西側、北西側と南西側からは日本海に注ぎ込む。
この山には最初、山スキーで登った。あずまや高原ホテルの前でスキーをはき、牧場の脇を登る。山頂直下は急なナイフエッジの雪稜となるのでスキーを脱いで登ると、2354メートルの山頂だ。
登山コースには他に、根子岳(ねこだけ)からの縦走や鳥居峠からのものもあるが、ぼく自身は、あずまや高原ホテルからのコースを使う。
山スキーに自信がなくなってきてからはスノーシューズをはいて登るようになった。どんなに深雪でももぐらないし、ころぶことがないから安心だ。
寒いのはダメという方には6月中旬、レンゲツツジが咲き誇る時期がお薦めだ。長野新幹線上田駅下車、あずまや高原ホテルに宿泊すれば送迎バスを利用できる。登りやすいが、高度差約800メートル、登り3時間30分、下り2時間30分かかるので、前泊した方が安心だ。
登り始めるとすぐ牧場にぶつかって左折、その先で右折、牧場の柵(さく)に沿って高度を稼ぐ。コース脇や牧場の中に、レンゲツツジが鮮やかな花を咲かせてている。冬には緊張するナイフエッジも、雪がなければ、どうということはない。登りきれば細長い山頂。信州祠(ほこら)と上州祠がある。山頂は360度の大展望。南・北・中央アルプス、晴れていれば富士山もそれと指摘できる。下れば待っているのはホテルの露天風呂だ。
花、展望、露天風呂、四阿山を新日本百名山に選んだ理由だ。体力に自信のない方でも、レンゲツツジと露天風呂だけでアウトドアを満喫できるだろう。