香川県から選ぶ新日本百名山を飯野山とするまで、時間がかかった。
四国では、愛媛県に西日本最高峰の石鎚山(いしづちさん)がある。徳島県には第2の高峰となる剣山(つるぎさん)がある。高知県には日本百名山こそないが、県の山好きには「さんれい」と呼ばれて親しまれている三嶺(みうね)がある。しかし、香川には、最初、これという山が思い浮かばなかった。
資料に目を通していたら、西行が詠んだと伝えられる、として「讃岐にはこれをば富士といひの山朝げの煙たたぬ日もなし」が紹介されていた。飯野山のことだ。讃岐富士といわれるほどに品格があり、歌に残されるほどに歴史がある。標高は422メートルだがこの山を新百名山に選ぶこととした。
飯野山はJR坂出駅南約4キロに位置している。実はうちのカミさんは坂出出身だが、登ってないという。それじゃこのチャンスに登ろうじゃないかと、息子2人も引っぱり出し、3月20日の昼ごろ丸亀駅の改札口に集まった。登山口となる野外活動センターまではタクシーを利用してしまう。登山道は幅広く山を一周するように拓かれている。危険個所は皆無といっても過言ではあるまい。いつものように準備運動を済ませてからスタート、ゆっくり足を上げていき、途中5分ほど立ち休みをして1時間足らずで頂上に到着した。
頂上は樹林で展望はないが、西側に少し下った所に「おじょも」の足跡の残された岩塊がある。傍らに展望台が設けられていて、讃岐平野が一望できる。おじょもというのは、この地に残る巨人伝説の主人公。山を造るのが好きであったとか。巨人と伝えられているのに、残っている足跡は意外に小さい。
往路を下れば1時間も要さない。安心して登れる名山であった。
翌日我々は金刀比羅宮を訪れた。その本殿辺りから望む飯野山は、平野部に浮かんで均整のとれた美しさがあると聞いたからだ。
表参道の両側にはみやげ物屋と旅館が並んでいる。お宮の横の展望所から北東を望めば、飯野山の美しい山容が、目にとび込んできた。讃岐富士と金刀比羅宮を楽しみ、そして讃岐うどんに舌つづみをうつ2日間の山旅になった。