名古屋など愛知県の山好きが、足繁(しげ)く通うのは鈴鹿の山々であるという。だが、主峰は御在所山、滋賀県と三重県にまたがる山である。愛知県の地図をひろげて県内の山を探す。県の東寄りに鳳来寺山という名前の山をみつけた。宇連川に沿って走るJR飯田線湯谷温泉駅の北西約3キロに位置している。湯谷温泉駅は豊橋から20番目、時刻表を見ると38営業キロある駅だ。
鳳来寺山は昔、桐(きり)の大木があったので桐生山と呼ばれていたという説もある。1300年ほど前、利修仙人が開山した。時の文武天皇の重い病気を祈祷(きとう)によって治したことで、天皇より寺を建ててもらうことになった。その寺が鳳来寺と命名され、山は鳳来寺山と呼ばれるようになった。山間にコダマするブッポウソウの鳴き声は有名だ。フリークライマー憧(あこが)れの岩場があり、駅名にもなっている温泉もあり、鳳来寺山は新日本百名山として選ぶのに文句なしの山だと思った。
6月2日の夕方、名古屋駅に降り立つ。市内にあるアウトドアショップが鳳来寺山登山のバスツアーを計画してくれたのだ。
3日、朝8時、市内を出発。表参道の駐車場で地元の方々と合流、総勢20人で登山を始めた。表参道は1425段といわれる石段が続く。石段は苔(こけ)生(む)していて風情がある。石段上りも、歴史を肌に感じていると足が軽い。約50分、ゆっくり登って鳳来寺本堂前に出て、小休止だ。
本堂の脇から奥ノ院へと山道が続く。急登で、岩場には鉄バシゴが架けられたりしている。
奥ノ院裏手の展望のいい岩場の上で昼食。南西に雁峰山、東に瀬戸山を望む。昼食場所から10分足らずで鳳来寺山頂上だ。684・2メートルの三角点がある。この山はピークが二つあり、北側のピークは瑠璃山と呼ばれていて695メートルだ。
下山は東へ向かう尾根をたどり、鷹打場で高度感のある展望を楽しんだ。その後、東照宮へと下る。鳳来寺山の東照宮は、日光、久能山と並べられて三東照宮と呼ばれ、格式も高い。
体力のない方にも表参道はぜひ登ってみることをお薦めしたい。本堂からは東照宮へとむかい、その歴史にも触れてもらいたいものだ。