中央線でトンネルを抜けると、目の前に甲府盆地が大きくひろがる。そのむこうに南アルプスの峰々が高く連なっているが、ひときわ大きく目立つのが白根(しらね)(白峰)三山。右から北岳(きただけ)3192メートル、間ノ岳(あいのだけ)3189メートル、そして農鳥岳である。
北岳、そして間ノ岳は日本百名山であり、わが国の第2位と第4位の高峰である。この2山に農鳥岳が加わって白根三山だ。遠望すれば一つの大きな山である。自分の趣味を押しつけるようで恐縮だが、本当は、白根三山は一つの山として登り、縦走していただきたい。
しかし、体力のある中高年登山者は塩見岳(しおみだけ)から間ノ岳、北岳を縦走する。自信のない方は北岳から間ノ岳を往復して戻ってしまうのだ。農鳥岳ははずれてしまい、残念でならない。農鳥岳は、3026メートルの農鳥岳と3051メートルの西農鳥岳の2峰からなる堂々たる名山なのだ。それならぼくが新百名山に選ぶことにしよう。そうすることで白根三山縦走を俎上に載せる人が増えたらいいなと思うのである。
登山口の野呂川広河原までは甲府駅前からバス。東京を朝たつと1日目は白根御池小屋まで、約5時間だ。
2日目は草スベリの急登をがんばり、稜線(りょうせん)上に出て北岳へと立つ。稜上には肩ノ小屋、北岳を越えると北岳山荘がある。3055メートルの中白根山(なかしらねさん)を越えると間ノ岳だ。下れば2日目の宿、農鳥小屋だ。約11時間がんばる必要がある。
3日目、ひとがんばりで西農鳥岳、ふたがんばりめで農鳥岳に立つ。農鳥岳という山名は春、農作業の始まりを告げる鳥の雪形が山腹に現れることに由来するという。いずれの山頂も南アルプスのまっただ中、さえぎるもののない360度の眺望を満喫できる。
下降点から大門沢へと下るのだが、奈良田までは約11時間、かなり長い道程だ。ふもとの温泉の中で手足をのばしたとき、生き返った心地がした。白根三山縦走は3千メートル級の峰を五つも踏んでいくというハードな縦走なので、初心者にはお薦めできない。
初心者には、前述の広河原への途中、バス停夜叉神峠(やしゃじんとうげ)登山口から登り1時間の夜叉神峠に立ち、白根三山の眺望を楽しむことでよしとしていただきたい。