剣山(つるぎさん)は徳島県の山である。徳島線貞光駅の南約23キロに位置している。1955メートルという標高は、伊予の石鎚(いしづち)山に次ぐ四国第2の高峰である。
登山口では、貞光からのコースが最もよく登られている。というのは、標高約1400メートルの見ノ越まで車道が通じ、さらに約1700メートルの西島まで登山リフトが架せられているからだ。見ノ越からなら2時間、西島からなら1時間で山頂に立てるという親しみやすさ、山頂のたおやかな緑のスロープの美しさ。これらの点が、徳島から選ぶ新日本百名山を剣山とした理由だ。
昨年9月、貞光に降り立った。駅前から予約しておいたタクシーで見ノ越へ上がる。
四国からは、剣山と石鎚山とが日本百名山に選ばれているので、剣山に登ったらその足で石鎚山に向かうのが定番コース。我々も、見ノ越から祖谷渓へ下り、阿波池田から伊予西条へ出る予定でいた。それがびっくり、祖谷渓へと下る道が台風で崩れ、通行止めなのである。
見ノ越から登山リフトは利用せず、歩き始める。約1時間、リフトの上の駅、西島で休憩。次のひとがんばりで剣山頂上ヒュッテに到着。オーナーの新居綱男さん(68)が笑顔で迎えて下さる。新居さんは「キレンゲショウマの咲くころにいらっしゃい」と誘って下さった。
キレンゲショウマはユキノシタ科キレンゲショウマ属、1属1種。品のいい黄色い花を咲かせる。剣山では7月下旬から8月が花期である。
7月から8月というと、ぼくも、白馬(しろうま)岳を筆頭に朝日岳、白山、鳥海(ちょうかい)山などに出かけてしまうのだが、ここではキレンゲショウマにはお目にかかれてない。剣山行きの計画は、今年も10月になった。剣山で、花には会えない。が、澄みきった秋空にゆったりとした緑のスロープはすばらしく映える、それも悪くない。
小休止の後、山頂にむかう。ひと登り、5分だ。平家の馬場と呼ばれるシコクザサの大草原である。目の前には剣山の双子の弟のような次郎笈(じろうぎゅう)が美しくそびえ、それから三嶺(みうね)へと続く山稜(さんりょう)、前後左右に山また山が波打っている。
たっぷり眺望を楽しんだ後、約1時間30分かけ、往路を見ノ越へと戻った。