佐賀県にはそれほど高い山がない。標高も福岡との県境に連なる脊振(せふり)山地の主峰、脊振山が1055メートル、長崎との県境にまたがる多良山地の最高峰、経ケ岳(きょうがだけ)が県の最高峰で1076メートル。県の地図をひらいて、新日本百名山はどの山にしようかな、と考え、数年前に黒髪山(くろかみざん)に登ったことを思い出した。516メートルという高さなのに、岩山なので見た目にもピリッとして印象深い山だった。
佐賀県西部に岩山を点在させているのが黒髪山地、主峰が黒髪山である。南側のふもとには有田町、北西のふもとには伊万里市という陶器の里もある。山頂だけが魅力の山ではなく、周辺も含め山旅を楽しめそうだ。佐賀県から選ぶ新百名山は黒髪山とした。
この春、3月13日、ツアーで黒髪山を訪れた。博多駅前をバスで出発したときは薄日もさしていたのに、気がつくと窓の外は降雪で煙っていた。バスは竜門ダム湖畔を走り、登山口の竜門に我々を降ろした。青牧峠へと登り始める頃には雪も上がり薄日がさしてきた。この日は雪が降ったりやんだりの一日であった。
青牧峠から青螺山(せいらやま)にむかう。黒髪山だけでは物足りないだろうということで、今回は青螺山から黒髪山へ縦走する計画になっていた。木の根、岩角、はてはロープにすがりついてようやく登った青螺山頂上は狭く、日曜日とあって登山者であふれかえっていた。
めざす黒髪山は目の前に見えたが、晴れていれば輝いているという海は、雲に消されて見えなかった。青螺山から急斜面を下れば見返峠、黒髪山への登り口だ。林の中をのんびりたどっていくと、岩場にぶつかる。山頂の天童岩の直下まできたのだ。コースはクサリや鉄バシゴで整備されているので、不安なく登っていける。見上げれば天童岩に立つ人が格好よく見える。最後のひとがんばりで、山頂に立つ。青螺山の頂上よりは広いが、切り立った岩場の上なので、跳びはねたりはしない方がいい。岩山とあって背筋がゾクゾクするような高度感が味わえる。山また山が重なる眺望は雄大だ。
下山は見返峠に戻り、竜門へと下る。一周で5時間弱である。ツアーバスで温泉へ。天下の名湯、武雄(たけお)温泉で汗を流して博多へと帰った。