大山(だいせん)は通常、「伯耆(ほうき)」と旧国名を冠して呼ばれる山陰の名山である。山陰線米子駅の東19キロに位置している。
初めて大山に登ったのは、30年以上も昔、友人の結婚式のために米子を訪れたとき、式場にむかう途中で見上げた大山北壁の威容に魅せられた。なにがなんでも登りたい。会社に休暇を一日延ばしてもらった。山陰第一の名山であり、ぼく自身の思い出も深い山。鳥取県から選ぶ新日本百名山は大山とした。
この5月、鳥取市内で「山っていいな」というテーマで講演した。登山の大きな魅力は、心身の健康への効果だと思う。「なぜ生活習慣病が解決されないのか」と考えたアメリカのお医者様が、アンデス地方などの長寿といわれる村々を訪れ、三つの共通点に気がついた。標高が高い。村人は長時間の肉体労働に従事。栄養摂取量が少ない。それって登山そのものではないかと指摘するのが、この話を紹介してくれた運動生理学者の山本正嘉さんだ。生活習慣病が解決するかはともかく、登山は気分がスカッとする。「山っていいな」なのだ。
講演会の翌日、大山に登ってきた。頂稜(ちょうりょう)はナイフエッジで崩壊が激しく現在では通行禁止になっていて、一般コースは夏山登山道一本である。
友人の車で大山寺橋近くの夏山登山道入り口まで送ってもらう。登っていくと、コースは次第に急になるが、左右はミズナラからブナに替わって緑も鮮やか。気分がウキウキする。このブナ林を歩けるだけでも登りがいがあると思う。
避難小屋の建っているところが6合目だ。この先潅木(かんぼく)帯となり、視界がひろがってくる。8合目まで上がれば頂上台地。傾斜が落ちるので足取りが軽くなる。周囲は特別天然記念物に指定されているダイセンキャラボクの群生地である。
木道をたどっていけば頂上避難小屋があり、その上に弥山(みせん)、1709メートルの頂上がある。大山の最高点は1729メートルの剣ケ峰(けんがみね)だが、前述したように頂稜は通行禁止なので、弥山を大山の頂上としよう。
展望は360度、よく晴れていると遠く四国の剣山(つるぎさん)までも見えるという。登り3時間、下り2時間半を見込んでおきたい。日本海に面した独立峰なので、天気は変わりやすい。雨具は絶対に携行することだ。