七時雨山(ななしぐれやま)という山名を耳にしたとき、ロマンチックな響きにちょっとわくわくした。登ってみたいと思った。山名の由来というのは、一日のうちに何回も、雨が降ったりやんだりする天候の不安定な山だということらしい。
花輪線荒屋新町駅の南東約6キロに位置している。東京からは東北新幹線で盛岡まで行き、さらにその先だ。
初めて訪れたのは10年近く前になる。荒屋新町駅前からタクシーで七時雨山荘まで入った。山荘の前から牧場の中の作業道を少したどり、牧草地をゆるゆると登っていくと、草地の尽きた所が3合目。コースはミズナラの林に入る。部分的に急登もあるが、よく整備されていて歩きやすい。6合目辺りからブナ林となり、9合目をすぎて笹原の中を登りつめれば、北峰の頂上だ。山荘から1時間40分。北峰の頂上は居心地はいいが、眺望を楽しむんだったら南峰まで足をのばすことをお薦めする。約15分。南峰の頂上はササと草原のドームである。目の前には南部片富士とも呼ばれる岩手山(いわてさん)がドーンと大きくそびえている。360度、山また山だ。
下って山荘のテラスでコーヒーを飲んでいると、来てよかったという思いがじわっと胸にひろがってくる。目に入ってくるのは七時雨山のたおやかなスカイライン、木々の緑、牧草地の緑のスロープ。この空間に身を置いているだけで、緊張感がすうっと抜けていく。ここは癒やしの大地なのだ。
下山は往路を戻るのがベスト。北峰まで15分、さらに山荘までは1時間だ。このときは、日程の都合で泊まることができなかった。2回目の七時雨山登山の際も都合で山荘に泊まることができなかった。3回目、昨年の7月、七時雨山に登り、やっと七時雨山荘に泊まった。「暗くなったらホタル観賞にご案内しましょう」。山荘のオーナー、立花幹雄さんの言葉に歓声をあげた。その時が来て、ぼくは暗闇の中に、すばらしい光の乱舞を見ることができた。
中高年の登山は山頂という点を目指すのではなく、周辺を含めて、面として楽しんだ方がいい。今年7月8日、新日本百名山還暦記念チャレンジとして七時雨山に立った。4回目の登山であった。