■死、生、愛を見つめて
納棺――遺体を棺に納める儀式。遺体を清めて着替えさせ、化粧を施して旅立ちの準備をする。
この作品は納棺師という職業を知った本木自らが発案した。オーケストラのチェリストから一転、納棺師に。そこで戸惑いながらもさまざまな死や遺族と向き合い、生、愛を見つめていく。
納棺は故人と最後にスキンシップやコミュニケーションをもつ重要な場だ。本木は実際に納棺の現場に立ち会い、自身も儀式の特訓を重ねて撮影に臨んだ。遺族に肌を見せずに遺体を仏衣へ着替えさせる所作一つをとっても、流れるように美しい。
納棺師は、セレモニーを最後の良い思い出に演出する黒衣だが、一方で「人に見られながら儀式を進める点では、芝居に近い部分もあった」と話す。
■誰もがおくりおくられる
死と生とは分かちがたいもの。撮影を通じ「『今、普通に生きていること』をすごく尊いと感じた」と振り返る。「その尊さを時々でも実感できるフラットな自分でいたい」。撮影を終えた現在も思いはつながっている。「人は人によって生み出され、亡くなる時も人によって送り出される。人に生かされていると感じていれば、人間関係を粗末に扱わなくなるはず」と静かに、しかし熱く語る。
年を重ねるごとに別れの数も増えていく。この作品は、100人いれば100通りの感じ方があるだろう。それぞれの心と照らし合わせて観てほしい、という。
■チェロを続ける理由
普段は撮影が終わると習得したことを忘れてしまうが、今回マスターしたチェロは続けていると話す。「せっかく少しでも弾けるようになったので、つい買ってしまいました。老後のために(笑い)。子どもたちのピアノと一緒に演奏したり、人に聴かせたり、『遠いゴール』を持ってみるのもいいかな、と。本当にいい出合いをしたし、そういった意味でも、記念碑的な作品になりましたね」
穏やかなまなざしで気負わず語る姿に、生死を受け止める温かい強さを得た主人公が重なった。
(インタビュー・文/小松綾子)
『おくりびと』
本木が発案、滝田洋二郎監督により映画化された本作。「死」という重くなりがちなテーマを、小山薫堂の脚本はユーモアを交えて描く。東京のオーケストラでチェリストを務めていた小林大悟(本木雅弘)は、楽団の解散により妻の美香(広末涼子)と山形へ帰郷。社長(山?努)のもとで納棺師として働きながら数々の死に面するうち、心境に変化が訪れていく。
死者を尊び、生を慈しむ。笑いをちりばめながら大切なものを気づかせる作品だ。9月13日(土)全国公開。
共演の山崎努(左)。
© 2008映画「おくりびと」製作委員会 9月13日(土)全国ロードショー
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