日本料理は「水の料理」と言われます。天然の軟水が至る所で湧(わ)き、流れている稀有(けう)の国。この水の利を生かした料理に重要な役割を果たすのが「だし」です。昆布、鰹(かつお)、煮干し、干し椎茸(しいたけ)などが純粋な水にうまみを添え、ミネラルなどの栄養も補ってくれます。
かつて、ある科学者によってうまみの正体がアミノ酸の一種であることが発見され、その後、化学的に工場でうまみだけが製造され、広く普及しました。鰹節を削ることも、昆布を常備することもなくなり、手っ取り早いうまみが広がったのです。たとえ化学的には同じものでも、味気ないものです。
科学の発達が、すばらしい習慣や情緒など文化的財産をなきものにする可能性もあります。そして悲しいことに画一的な味が当たり前になります。私はうまみ調味料を使った食事を頂くと、後味の悪さですぐにそれとわかります。けれどもその味に慣らされると、この刺激がなくては味気ないと言います。まさに食の麻薬です。
五味は甘、酸、鹹(かん)、苦、辛。うまみは日本料理の根底に流れる味。さあ、白い粉を使わず、ちゃんと昆布でおだしをとってみましょう。昆布一枚にこもる味わいを奇跡の水で頂く。その素材に向ける思いこそ、悠久のうまみの素(もと)ではないでしょうか。夏の冷やした麦茶のように容器に手のひら大の昆布を入れ、水を張り常備します。水やお茶代わりに飲め、料理にもすぐに使えます。重宝ですよ。