夏野菜は種類が豊富で、一つひとつに力があります。鮮やかな色も魅力です。ナスの紫、トマトの赤、甘唐辛子の緑、カボチャやトウモロコシの黄、新レンコンの透明感ある白は涼しさを感じます。沖縄では、ゴーヤーをはじめ、田芋、紅芋、長命草、水前寺菜、ヘチマ、島らっきょう、マンゴー……。当地ならではのたくましい野菜や果物が出回ります。働き者の婦人たちが、夏の暑さをしのぐ野菜料理をたっぷり作ります。
かつて精進料理店を営業中、真夏には汗でぬれたシャツを1日に何枚も替えました。冷房もきかない厨房(ちゅうぼう)では、火攻めの苦しみに耐えなくてはなりません。お客さんが帰って片づけが終わると、精も根も尽きます。寝苦しい夜が続くと、一層体力を消耗します。夏はもうごめんだと毎年思いながらも、力ある夏野菜のお陰で続けられたと感謝しています。
もの言わぬ野菜の魅力を引き出すのは容易ではありません。野菜の扱いが苦手な料理人も多く見受けられます。単に肉魚の付け合わせと思ってモノ扱いしては、野菜の力は発揮できないでしょう。野菜が主役。まず、トマトを目の前に置いてよーく想像してください。トマト一つ作れない自分。脳みそがないのにちゃんと実をつけ、我々を生かしてくれるトマト。しかも見返りを求めず、あたかも食べられることを喜んでいるかのようです。さあ、これから我々の創造の始まりです。一緒に体が喜ぶ料理をしましょう。=おわり