展覧会開催の経費は近年上昇の一途をたどっている。海外の主要美術館から要求される作品借用料はうなぎ登りだ。億という金がとぶ。それに追い打ちをかけたのが、2001年9月11日の「同時多発テロ」だ。
美術品を借りる際には当然ながら保険を掛ける。海外から借りる場合、保険料率は評価額の0.15%未満だった。ところが「9月11日」を境にこの率は倍以上にはね上がった。掛け金が1億5000万円を超す展覧会もある。主催者としては観覧料を値上げしたいところだが、そんなことをしたら客離れが進むだけだ。
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| 現在日本巡回中の「大英博物館展」でも、多額の保険が掛けられたにちがいない |
そこで最近特に注目されているのが、美術品の国家補償制度である。海外から美術品を借りる場合、政府が保険会社に代わって賠償責任を負うというもので、欧米では広く採用されている。アメリカでは1975年にこの制度が導入されて以来、27年間に政府が支払った賠償金は2件、10万4700ドルであったと聞く。わが国でもかなり前から文化庁、新聞各社、全国美術館会議(加盟約350館)が導入を要望してきたが、大蔵省(財務省)はなぜか拒み続けてきた。
この制度にも問題はある。たとえば、賠償額には総枠がある。どの展覧会に適用すべきかは、開催の意義、展示環境などを考慮して公正に審査されるべきだ。そのためにはルール作りが不可欠である。さもないと、新聞・テレビ各社入り乱れて「内ゲバ」が起こること必至である。
ともかく、財務大臣谷垣先生、ご勇断をお待ちしております。
(横浜美術館館長 雪山行二)