市川猿之助のスーパー歌舞伎でも、蜷川幸雄、野村萬斎の「オイディプス王」でも、前売りチケットはあっという間に売り切れてしまう。立ち見でもいいからと言っても、消防法が許さない。あきらめて再演に望みを託す。座席数という問題はあるが、チケットを入手できた人にとっては好条件での鑑賞が保証される。大型美術展での混雑解消のためには、これを手本にするほかはない。
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| 三鷹の森ジブリ美術館は予約入館制を採用。「まもり神」のロボット兵もじっくりと楽しめる=©Museo d’Arte Ghibli |
まず、好ましい鑑賞に必要な観覧者ひとり当たりの会場の面積を決めよう。これで観覧者数の上限が定まる。あとは会期の初日から最終日まで、一日の開館時から閉館時まで、平均してぴったり人が入るように工夫する。そのためには日時指定の前売り券を売る。たとえば3月12日の午前10時から11時のあいだに入館して下さいといった制限をつける。夜間割引を徹底する一方、土、日、祝日は観覧料金を上げる、等々。この種の方策は欧米の美術館では常識となっているが、わが国ではいっこうに実現しない。それはなぜか。
一般に新聞・テレビが出資する大型展では開催に途方もない経費がかかる。できるだけ多くの人を入れて赤字を少なくしたい、あわよくばもうけたいというのが美術館を含む主催者の本音である。せっかく開催するのだからひとりでも多くの人に見せてあげたいという感情がこれに拍車を掛ける。だから、この種の展覧会はいつになってもお祭り騒ぎの域を脱しない。「鑑賞」と「お祭り」、あなたはどちらを選びますか?
(横浜美術館館長 雪山行二)