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美の経済学タイトル
画商からそっぽ 買えない弱み
 東京都現代美術館をはじめとして、近ごろ作品購入費ゼロの美術館がふえてきた。私は1998年10月から3年半名古屋の愛知県美術館に勤務したが、そのうち2000年度は購入費がゼロだった。県が財政難を理由に、美術品等取得基金のなかから15億円を召し上げ、残る2億円の使用を凍結したからだ。

東京都現代美術館
東京都現代美術館。2000〜03年度の作品購入費はゼロ
 作品購入費がゼロになったことは、またたく間にこの狭い業界に知れわたり、画商からの売り込みはパタッと途絶えた。困るのは美術市場の動向に関する情報が入ってこなくなったことだ。これが何年も続くと本当にお手上げになるだろう。それでも、たまには立ち寄ってくれる画商さんもいた。豊田市美術館とか三重県立美術館に売り込みに行った帰りだ。ちょっと休ませて欲しい、という。苦笑しながらも熱烈歓迎だ。

 購入費がゼロになってもっと困るのは、現役作家の展覧会がやりにくくなることだ。展覧会のために新作をつくって欲しいとお願いをする。いい作品ができたら、美術館として買わせていただくのが礼儀だ。いかに高名な作家でも、寸法が大きく、しかも「前衛的」作品となれば、右から左へとすぐに売れるものではない。購入費がゼロでは、展覧会を開かせて欲しいとすら言いにくくなる。

 美術品の継続的な収集こそ美術館活動の基本と私は考えているが、時にそれは展覧会の実現にとって不可欠の条件ともなる。現代美術を扱う美術館は、パトロンの役割も果たしているのである。

(横浜美術館館長 雪山行二)

〜2004年4月22日付 朝日新聞(東京本社)夕刊「マリオン」から〜

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